テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>7.自動車OSS
2003/09/15 16:18
週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載
IT実感社会への道標 行政手続きをオンライン化
複数の役所にまたがる面倒な行政手続きをITの利活用で一度に行えるようにするOSS。自動車保有関係手続きも、車庫証明は警察署、登録手続きは運輸支局、自動車税納付は都道府県税務事務所へと足を運ぶ必要があるため、OSS導入が01年3月に策定されたe-Japan重点計画に盛り込まれ、本格的な取り組みがスタートした。国土交通省では、02年8月にOSSの全体像をまとめた「グランドデザイン」を策定して、NTTデータにシステム基本設計を発注。今年4月にOSSの「要件定義の概要」をまとめて、自動車メーカーの完成検査終了証、損保会社の自賠責保険証明書など民間機関が交付する証明書も含めてワンストップ化する方針を明確化。これまでの自動車保有関係手続きは、自動車を購入した販売店に手数料を支払って代行してもらうことが多かったが、OSS導入でどう変わるのか。「基本的には販売店の端末を使って電子申請を行うケースを想定している」(猪股博之・国土交通省自動車交通局技術安全部管理課専門官)。オンライン化で購入者が自宅のパソコンからでも電子申請が可能になるが、自動車購入時や、検査時に行う手続きが多く、タイミングや手間を考えると、販売店の担当者のアドバイスを受けながら販売店の端末を使って利用されるというイメージとなる。紙の申請で捺す印鑑の代わりに、“電子印鑑”である公的個人認証や法人認証を購入者が取得していることが利用の条件だ。
OSS導入で、販売店では繁雑な手続き事務を大幅に効率化できれば、「現在の手続きの代行手数料を引き下げることが可能になる」(猪股専門官)。ここが自動車購入者の最大のメリットだ。さらに納車までの期間短縮も期待できるという。しかし、全体の手続きの流れは、紙による申請の時とほとんど変わっておらず、システム全体の構成もかなり複雑だ。「電子化にともなって業務手順の見直しも行ったが、制度の公平性を確保する観点から従来どおりの仕組みとなった」(猪股専門官)。偽造登録などの犯罪も増加傾向にあり、将来的には排ガスや廃車処理の規制強化が検討されている中で、登録システムが果たす役割がますます重要になるとの認識からだ。
一方で、産業界からはこんな声も聞こえる。「自動車販売店の収益構造に占める代行手数料の割合は2-3割とかなり高い。電子申請の導入で手数料の大幅な引き下げを求められれば、販売店の経営を直撃することになりかねない」(業界幹部)。また、民間機関が交付する証明書を電子化するために民間機関が共同で設立する予定の「情報処理機関(仮)」をめぐっては調整段階にあり、まだ完全に「足並みが揃っていない」との指摘もある。OSS導入は05年までに全国の都道府県に拡大していく計画。今後は公的個人認証の普及、販売店のシステム対応など利用拡大に向けた基盤整備も重要な課題となりそうだ。
- 1