シフトアップIT利活用 経済産業省の次なるシナリオ

<シフトアップIT利活用 経済産業省の次なるシナリオ>第3回 情報家電の普及戦略スタート

2003/09/15 16:18

週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載

 「情報家電」――。言葉自体は新聞などで取り上げられ国民の認知度も高まってきているが、実際の商品イメージや利用シーンが具体化しているとは言い難い。経済産業省は、2002年9月から「情報家電の市場化戦略に関する研究会(e-Life戦略研究会)」を立ち上げ、情報家電の利用による新しい生活様式の提案(需要創造)とIT・家電産業の国際競争力強化(産業育成)の視点から、情報家電の普及戦略をスタートした。

 カギを握っているのは、消費者である。「(コンピュータ技術と通信ネットワーク技術が融合した)情報家電も、家電製品であることにかわりはない。子どもやお年寄りも日常的に使うものであり、消費者保護は不可欠」(湯沢広吉・商務情報政策局情報通信機器課情報家電企画調整官)な商品である。

 アンケート調査などによると、国民の情報化に対する意識は利便性などの「期待」より、犯罪の増加やプライバシー問題など「不安」の方を強く感じており、「何もせずに放っておいたままでは普及は難しいのではないか」との懸念も指摘されていた。

 同研究会が4月に公表した基本戦略報告書「e-Lifeイニシアティブ」では、情報家電の普及に向けて7つの行動計画が示された。

 (1)技術の共通化・標準化の推進、(2)実証実験を通じた普及の促進、(3)相互運用性などの調査公表、(4)消費者保護の徹底、(5)情報家電普及のための環境整備、(6)要素技術の開発、(7)情報家電開発・普及体制の構築――である。

 これらの行動計画のうち2つは、消費者の不安を取り除くための施策。(3)では、消費者が商品を選ぶ時の参考になるような客観的な情報をまとめた「コンシューマレポート」の作成と公表、(4)ではセキュリティ対策、消費者保護、安全対策などを徹底する方針を明確化した。

 コンシューマレポートで提供する情報は、商品の技術的な評価項目とユーザーの体験データに基づく評価項目が想定されており、現在評価基準の検討など具体化に向けた準備が進められている。

 情報家電普及のためには、不安を取り除くだけでなく、情報家電の有効性を消費者にアピールする必要がある。

「従来の家電製品は、メーカー側が機能や仕様を決めて売り出していたが、情報家電では消費者の個別ニーズに応じて異なるメーカーの商品を組み合わせたり、利用環境を個別に設定したりできるようになる」(湯沢企画調整官)。

 こうしたきめ細かなサービスも実現できる特徴を認知してもらうためにも、実際の利用シーンを想定した形で計画されている「実証実験」の役割は重要だ。

 経済産業省では、今年度に入ってすでに3件の実証実験と1件の標準化プロジェクトをスタートさせた。「近く公募が行われる案件を含めて、当面はこれらプロジェクトの成功に全力を注いでいく」(湯沢企画調整官)。情報家電普及への突破口が開くことを期待したい。(ジャーナリスト・千葉利宏)
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