テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>6.おおさかユビキタス
2003/09/08 16:18
週刊BCN 2003年09月08日vol.1005掲載
御堂筋で実証実験
大阪市では、2002年6月に施行された都市再生特別措置法を受けて『大阪市都市再生プログラム』を策定。「知的ビジネス創造機能の強化」、「にぎわい・文化集客機能の向上」、「魅力あふれるまちづくりの推進」の3つの目標を掲げ、今年4月に設置した大阪市都市再生本部を中心にさまざまな施策を組み合わせて総合的な取り組みを開始した。同プログラムでは、具体策として「ITの活用」を積極的に打ち出し、IT関連産業の振興・集積、IT実証実験などによる御堂筋のにぎわい創出などの施策を盛り込んだ。大阪市では、今年度から総務省が導入した新規施策「ITビジネスモデル地区構想」の指定も今年4月に取得。今回、御堂筋での実証実験を推進する母体となる協議会が発足し、本格的な活動が始まった。
「おもろい仕組みを作れば、食いついて、乗ってくるのが大阪人。そんな取り組みを期待したい」――。協議会会長に就任した中野教授は、「御堂筋」発の新しいITサービス実現への意気込みをそう語る。これまでに日立製作所など大手ITベンダーだけでなく、NPO(民間非営利組織)法人なども参加して7つの実証実験(=表)の準備が始まっている。
最初にスタートするNTTドコモ関西の実験には、御堂筋周辺の飲食店や物販店など約1000軒が参加。「静かに飲める」、「お酒にこだわる」といったシチュエーションから店を検索すると、略地図生成技術を使った「わかりやすい」地図をGPS携帯に表示し、最短経路を案内する。
中野教授が言う「おもろい」取り組みと期待できそうなのが、日立製作所を中心に準備が始まったICカードを使ったプロジェクトだ。竹中工務店や住友商事なども参加し、関西地区の地下鉄・私鉄各線の共通カードを発行する「スルッとカンサイ」が準備を進めているICカードを利用する計画。現在、JR東日本が発行しているICカード「スイカ」は発行枚数700万枚近くと爆発的に普及しているが、機能は鉄道の乗降に限定、外部の企業の利用もまだ認めていない。
今回の実験では、御堂筋にタッチパネル方式のアクセス端末(TAP)や自動販売機などを設置し、スルッとカンサイの交通ICカードをアクセスキーとしてさまざまな情報サービスや料金の決済などができる基盤を構築する。TAPには、御堂筋に集まってきた利用者が気に入ったお店などの情報を入力してもらい、その情報をベースに「御堂筋から新しい文化やトレンドを発信できる仕組みをつくりたい」(日立製作所関西支社・津田芳一主任技師)。ITの活用と御堂筋の賑わいも一段と増しそうだ。
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