視点

エビデンス・ベースド・ケアー

2003/09/01 16:41

週刊BCN 2003年09月01日vol.1004掲載

 我が国はスウェーデンを抜いて世界一の高齢国家になった。現在、30兆円を超える医療費の50%以上が65歳以上の高齢者で占められている。この結果、高齢者向けの介護医療、中高年者の健康維持のための予防医療が今後一層重要なテーマとなる。これらの医療分野は在宅重視型のサービスとならざるを得ない。介護医療においては、在宅ケアーを核としてQOL(生活の質)の向上、長期にわたるフォローアップ、総合診療、危険予測管理などが重要な要件となり、地域を核とした新しい医療・ケアー連携体制が求められることになる。ここでは、主治医を中心にした各専門医療機能と、ケアマネージャーを中心にした各専門ケアー機能相互の適切な連携サービスの実現が必須要件となる。

 予防医療においては、個人向けのデマンド型健康サービス実現に向けて、健康・予防マーケットの既存事業者サービスと医療分野の新たな連携が求められる。ここでは、従来のような画一的な生活指導ではなく、個人の状況に応じて日常生活の中に無理なく組み入れることができる柔軟で実践的な自己介入の仕組みが必要である。国や企業に依存した病中・病後の保障がより一層厳しくなることを考えると、これからは自分の健康は自分で守らなければならない。簡便かつ効果的な予防医療と、高いQOLを提供する介護医療を実現するためには、行政および民間が連携し、在宅での総合医療サービスの体系化を図らなければならない。こういった在宅型の総合医療サービスを効率的、かつ効果的に行っていくためには、検査や生活指導、治療結果などの情報を、本人を含む関係者間で共有することが重要になる。ただし、個人情報としてのエビデンスを組み込んだ新しい事業モデルにおいては、プライバシー問題を避けて通ることはできない。

 自分の身体や生活環境に関するエビデンスを自身で所有、管理できる仕組みを構築する。この蓄積されたエビデンスを各分野の専門家がそれぞれの視点で分析し、自身の健康に関連する知識を幅広く集約する。エビデンス・ベースド・ケアーは、個人情報の統合化によって、各種の健康サービスや医療サービスの調達の適正化を図ることで、個人に大きなメリットを生むための仕掛けである。行政やプロバイドサイドへの勝手な利益誘導は絶対にあってはならない。
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