視点

「店頭効果」を考える

2003/08/25 16:41

週刊BCN 2003年08月25日vol.1003掲載

 今どき、パソコン界の流行がぴかぴか液晶だ。液晶ディスプレイの表面を艶あり加工し、外光を反射しぴかぴかに光るようにしたもので、売り場に行くと、眩しい液晶画面が客を迎えてくれる。販売側では、もはやテレビが映るAVパソコンはぴかぴか液晶でないと売れないという。しかし、これほど売れ筋指向のものづくりの、おかしな面が表れているケースは他にない。売り場のメリットと、ユーザーのメリットが完全に相反しているのである。ぴかぴかが流行りだしたのは最近のこと。もともと、パソコン用のディスプレイは、部屋の照明など外光の映り込みを抑えるガラス表面にノングレア加工処理されていた(現在でも単体の液晶ディスプレイはそうだ)。

 しかし、あるメーカーが、試しにぴかぴか処理したところ、大いに売れ、それを横目で見ていた他メーカーが続々と追随した。しかし、それはとんでもないシロモノである。ぴかぴか液晶で作業するとどうなるか。ぴかぴかということは、周りの光を反射して艶を出しているのだから、当然、周りの景色はみな、反射され目に飛び込んでくる。自分の顔はもちろん、少し傾けて置くわけだから、天井の照明ははっきり写り込む。映像にないものは見えてはならないというのは、映像表示の常識以前のこと。画像とインタラクティブに対話して作業を進めるパソコンなら、絶対に写り込みはあってはならない。そうでないと、写り込んだ“自分”と対話することになる!?

 なんで、そんなものが流行るのか。それが「店頭」という、一種のバーチャルな環境で買う判断がされるからだ。販売員はこれは売れ筋と、ぴかぴかを薦める。購買者も、店頭での見栄えが良いから、買う。その連系でぴかぴかの売り上げは伸びる。メーカーは売れ筋指向だから、追随して自社製品をぴかぴかにする。売れる。ここまでは販売側、メーカーはともにハッピーだ。不幸なのが買った人だ。店頭で輝くほどだから、家に帰って使うと、眩しいし、写り込みも激しいから、映像が見にくい。まるで鏡だ。パソコンのぴかぴかの流行は、あまりにユーザー不在な現象である。大事なのは、売れることではなく、ユーザーに満足してもらえるかどうかである――という原則を改めて確認したい。
  • 1