視点
読書器への期待
2003/08/18 16:41
週刊BCN 2003年08月11日vol.1002掲載
いつでもどこにいても、読みたいと思ったときには本にアクセスして読み出せる。紙の本では決してのぞみえないこの特長を、読書器は後退させるべきでない。独自の電子本販売ルートを用意することは、それがインターネットへのバイパスを備えていないのなら、普及にとってはマイナスに作用する。新しい読書器もまた、インターネットを基盤とし、電子書店やテキストアーカイブが育ちはじめた大きな読書環境の一部として、自らを位置づけるべきだ。
逆に、パソコン電子本で達成できなかったのは、まずなによりも、口ごもらず、堂々と主張できるレベルの「読みやすさ」だった。技術的なやりくりを重ねて、低い解像度の画面上で、なんとか文章の読みやすさを高めようとしてきたが、紙とは大きな差があった。一方、新しい読書器は、ノートパソコンの標準的な解像度である1024×768ドット程度をすべて使って、紙の本の1ページ相当を表示する。実際に目にしてみると、読みやすさには格段の差がある。読むことに特化した専用端末には、存在意義があると、痛感させられる。
読みやすい文字に加え、パソコンの電子本が達成できていない「必要だけれど出せなかった文字」を表示するという課題にも、読書器はぜひ応えて欲しい。第3第4水準の漢字などを定めた文字コード、JIS X 0213へのメーカーからの対応は、Max OS Xを唯一の例外として遅れている。この状況を逆手にとって、0213をサポートし、古典的な名作の電子化に不可欠な第3第4水準漢字を用いたテキストの作成を下支えすれば、ここでもまた、読書器は独自の存在意義を主張できる。今までは出せなかったものを含めて、格段に鮮やかに文字を表示できるのであれば、読書器は、新しい読書環境において強力なライバルとなる携帯電話と、十分互していけるだろう。
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