情報モラルとセキュリティ

<情報モラルとセキュリティ>15.ファイル交換ソフト

2003/07/21 16:18

週刊BCN 2003年07月21日vol.999掲載

 ACCSは、社団法人日本レコード協会と協力して、ファイル交換ソフトの利用実態調査を行い、先月、その調査結果をまとめた(詳細はACCSホームページ=http://www.accsjp.or.jp/に掲載中)。インターネット人口統計と合わせ推計すると、現在の利用者は約98万6000人。ファイルを他人がダウンロードできる状態で共有しているのは、このうちの45.1%にあたる。著作権法では、これは公衆送信権(送信可能化権)の侵害にあたり刑事罰の対象になる。ACCSが手がけた事件でも、現にファイル交換によって逮捕者が出ている。(コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS) 専務理事 久保田裕)

 一般に、ファイル交換は主に学生が行っていると考えがちだろう。しかし、今回の調査結果の回答者属性を見ると、職業別で最大回答者は42.5%の会社員である。学生は4.6%で公務員(5.1%)より少ない。年齢構成も、30代(43.0%)、40代(25.3%)、20代(18.4%)と続く。この結果から、ファイル交換を勤務先で行っている可能性についても言及せざるを得ない。もちろん、システム管理がしっかりされている企業では現実的にできないだろう。しかし、本当に大丈夫だと言い切れる企業は何社あるだろうか。「自社は大丈夫だが、子会社の事情は知らない」という話もよく聞く。関連会社から著作権法違反で逮捕者が出るというリスクを考える必要はないだろうか。

 音楽、映像、ソフトウェアをはじめ、他人の著作物の価値を尊重しない人は、おそらく、自社の営業秘密や顧客情報もぞんざいに扱っていることだろう。それは、ファイル交換を勤務先ではなく自宅で行っている人についても当てはまる。自社開発のDRM(デジタル著作権管理)技術で成長しているイージーシステムズジャパンのセキュリティ製品「ezFile Secutity」、「Wrapsody」などでは、情報の発信者が、配布先や多段階あるセキュリティレベルを自ら判断し設定する。設定画面には、通常「制限ルール」などとするところを敢えて「セキュリティポリシー」という表記を使い、情報モラルを訴えるようにしている。社員教育で、顧客情報の扱いに注意する必要があると繰り返しても、本質的な教育にはならない。まず、自分たちが扱っている情報は価値があると認識すること。そのためにDRMなどセキュリティ技術を使う。そうすれば、情報に敏感になり、他人の情報に気を遣い、合わせて不法行為を犯すリスクを減らせる。セキュリティ技術の導入が、情報モラル育成に大きな効果を与える。
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