Japan STOCK
日経平均1万円台回復 ソフトバンク、急騰急落
2003/07/21 16:04
週刊BCN 2003年07月21日vol.999掲載
米国市場の変調に警戒
日経平均株価は約10か月ぶりに1万円台を回復。4月末の安値からの上昇率は30%超に達した。連日の大商いに青息吐息だった証券会社が息を吹き返したほか、小泉首相の経済失政を非難する声も小さくなりがち。生保の大部分は保有する株式の評価損が消えたようだ。
さらに、株式市場の時価総額は3か月間でおよそ60兆円も増加。株高による資産効果が個人消費に好影響をもたらすとの期待が膨らむなど、株価上昇は多くのプラス効果をもたらしている。
急騰が話題になったのがソフトバンク。7月9日には3800円台と2週間で株価は2倍に上昇。売買代金は連日東証1部のトップとなり、9日にはITバブル期の2000年4月以来の1000億円台に膨らむ人気となった。ソフトバンクは7月3日に「オンラインゲームを集めたポータルサイト運営を始める」と発表。ヤフーBB事業に対する期待感を高めることにつながったとはいえ、株価を押し上げるほどの材料ではない。
結局、NEC、富士通、古河電工などかつてのIT相場に活躍した銘柄が軒並み急騰するなかで、IT株のカリスマ的存在として当時個人投資家に絶大な人気を誇っていたソフトバンクに短期売買の資金が集中する格好になった。
しかし、ソフトバンクの株価は11日には3000円割れに急落。そのきっかけは米ヤフーの株価急落に代表される米国市場の変調。
米ヤフーは7月9日に4-6月期決算を発表。ネット広告収入の回復で純利益は前年同期の2.4倍に拡大、ネットバブル期以来の水準。03年12月通期の売上高予想について32-37%増に上方修正した。好決算にもかかわらず、発表翌日の米ヤフーの株価は35ドル台から32ドル台へ急落した。
結局、「好決算は織り込み済み」というのが市場の反応。今年に入ってから株価は2倍超になっており、売りを出すきっかけになったようだ。米ヤフーは毎シーズン、先陣を切って決算を発表。「1番バッターのヤフーが出塁した場合の勝算はかなり高い」と企業業績発表全体を占う上で注目度が高いが、期待に反する株価下落に市場全体がショックを受けた格好だ。
米ハイテク企業の決算発表は、16日のIBM、17日のマイクロソフトなどに続き、21日チェックポイント、TI、22日サン・マイクロシステムズ、23日クアルコム、24日イーベイ、AT&T、JDSユニフェーズ――と本格化する。その動向が注目される。
東京市場が最も警戒していた米国市場の変調が、米国株の本格的な調整に移行するのかどうかを見極めるには少し時間が必要だが、急ピッチで上昇していた東京市場には一服が必要だろう。
株価上昇によって東証1部全銘柄の配当利回りは1.2%台と長期債利回りと同じ水準まで低下。また、かなりの銘柄がPBR(株価純資産倍率)1倍を回復、株式の強烈な割安感はなくなっている。(有賀勝久)
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