OVER VIEW
<OVER VIEW>長引くIT不況の国内ハイテク決算総括 Chapter7
2003/07/14 16:18
週刊BCN 2003年07月14日vol.998掲載
卸売り・商社・リテール 2003年3月決算
■増収、減収で明暗分かれる利益格差も明確にパソコン国内市場の低迷で、ITの卸売り・商社、リテールなど流通業界にも影響が出始めている。卸売り・商社最大規模のキヤノン販売の売上高は前年比12%減、そして経常利益も33%の減益となった(Figure37)。
しかし、パソコン卸売りトップのダイワボウ情報システムは厳しい市場にもかかわらず6%増収となり、加賀電子、丸紅インフォテックも増収で、営業段階でそれぞれ大幅な増益を達成した。
一方、リテールではデジタル家電立ち上がりの影響を受ける大型家電量販店は、増収増益傾向も見られるが、パソコンに依存する専門大規模リテールでは経営環境が厳しくなっている(Figure38、39)。
量販最大のヤマダ電機単独決算では、売上高34%、営業利益25%という大幅な増収増益である。一方、パソコン専門リテールの代表、ラオックスは売上高が7%減少し、営業損失も前年の24億円から30億円と悪化し、パソコン市場低迷の影響を直接的に受けている。コジマは若干の増収だが営業損益で59億円の赤字、ベスト電器は4%減収で最終損益で12億円の赤字、旧デオデオとエイデンが合体したエディオンは21%とリテールとしては高い総利益率を確保し、損益はすべての段階で黒字を確保した。
ソフマップは損益すべてが赤字となり、デンコードーは若干の増収であったが営業で減益となった。PCデポコーポレーションは26%と売上高が高い伸びを示し、すべての損益で増益となった。
リテールは大規模店が買収や合併によりますます大型化を目指す動きも強まっている。さらに赤字店を閉鎖し、立地条件で期待される地域での新店舗開設を積極化する「スクラップ&ビルド」が強まる傾向も見られる。その典型はヤマダ電機だ。
同社はダイクマグループを取得し、赤字7店を閉鎖し、新規に31店舗を開設、期末店舗総数は201となり、売上高で第2位コジマと2900億円の差を付けた。ヤマダはさらに新年度に売上高を伸ばし、04年3月期には前年度比22%増の9700億円の売上高を見込んでいる。
リテール大型店が勝利する構図は米国市場における一般消費者向けのウォルマート、家電、IT量販店ベスト・バイに見ることができる。ベスト・バイは米国、カナダに571店を展開する超大型リテールで、その売上高は226億ドル(2兆7120億円)とわが国最大ヤマダ電機の3.4倍の規模である。
■健闘する国内大型卸売り、付加価値販売がキーポイント
米国の2つの巨大ディストリビュータと、国内パソコン卸売り大手ダイワボウ、丸紅ハイテックの経営指標を比較すると、わが国大手卸売りは健闘していることがわかる。米国パソコン市場では流通を介さないデルが30%以上のシェアを握り、一方システムインテグレータ(SIer)が自ら組み立てるホワイトボックスのシェアもデルに追っている。
この市場でブランドパソコンを主体に流通する巨大ディストリビュータは売上高の大幅減少と、総利益率低下に苦しんでいる(Figure40)。
イングラム・マイクロの総利益率は5.5%、テック・データ5.3%となり販管費率のこれ以上の圧縮も困難で最終損益ではともに赤字に陥っている。
わが国も中型・大型リテールの仕入先が卸売りからメーカー直販となって卸売り環境は厳しさを増しているかに見えた。しかし、ダイワボウなどはメーカー系列の卸売りから、卸売り先顧客を奪い売上高を伸ばしている。さらにダイワボウ、丸紅の総利益率は米大手より高いため、両社ともに営業段階で黒字を確保している(Figure40)。
ダイワボウなどは米大手ディストリビュータと比べて、まだ売上規模拡大の余地はある。それには同業シェアを徹底的に侵食するカニバリズム(共食い)に活路を見い出さなければならない。
キヤノン販売は複写機市場低迷の影響を受けたが、デジタルカメラの需要増でカメラ事業の売上高は8%伸びている。同社はさらに「デジタルソリューションプロデューサーへ」を経営目標とし、「ビジネスソリューションカンパニー」の位置づけを強化する方針だ。
加賀電子は「独立エレクトロニクス商社」として成長してきており、川上から川下までエレクトロニクス全般にわたる企画・開発・EMS取引も強化する方針だ。04年3月期は前年比13%増、1850億円の売上高を見込んでいる。
■ポイントカード活用でヤマダの独り勝ち
米国リテールでは家電、情報機器双方が強いベスト・バイ独り勝ちの様相が強まった。ベスト・バイは店舗数拡大で売上規模を伸ばし、それと同時にメーカーへ仕入価格圧縮を強く働きかけ、規模拡大とともに総利益率も高めている(Figure41)。
この結果、直近では22%以上のSIer並みの総利益率を確保する。ベスト・バイはパソコン販売最大手コンプUSAの法人需要を取り込んで、パソコン売上高も大きく伸ばす典型的カニバリズム勝利型戦略が成功している。ヤマダ電機もベスト・バイと同じようにパソコン本体売上高で21%、ソフト、周辺機器を含めると22%伸ばした。これに対してコジマ、ベスト電器、ラオックスはパソコンの売上高を大きく減らしたので、パソコンでもヤマダとの差はさらに大きくなりつつある(Figure42)。
しかしヤマダでも総利益率と販管費の差は僅かとなり、超大型リテール環境も厳しくなっている。国内リテールは総利益率低下とともに、売上高販管費率をさらに低下する必要に迫れられ、従業員1人当り売上高の大きい大型リテールがますます有利となる傾向が強まろう。さらにリテールでは顧客囲い込み強化のためポイントカードの利用を活性化させている。当然ポイントカードの利用拡大は利益を圧迫する要因だ。
多くのリテールではポイントカードによる処理を「売上値引」として売上高から控除する処理を行っている。しかしヤマダなどポイントカードを積極化するためこの処理を販売費計上へと変更した。
ヤマダ電機の連結貸借対照表では、流動負債にポイント引当金76億円(売上高比1%)が計上されている。ヤマダなどは完全に戦略的観点からポイントカードの活用を計画しているといえるだろう。
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