視点

戦略的なビジネスインテリジェンス

2003/07/07 16:41

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 今や企業を取り巻く環境はかってない程急激にしかも不連続に日々変化しながら動いている。ダーウィンは「強いものが生き残るのではなく、変化に対応できるもののみが生き残るのだ」と名言を残している。その意味で、今日程起こりうるあらゆる変化に対して文字通り全知全能を絞ってそのための対応シナリオを考え、各種のシミュレーションを繰り返しながら先手を打っていく“攻めの経営”と“Agile(敏捷)な経営”が求められている時代はないといってもよい。

 一方、IT化の進展によって膨大なデータウェアハウスが構築されるようになってきた。問題は、これらの大量のデータがERPやCRM、SFA、SCM等の適用業務や部門別にバラバラの体系で蓄積されて全社横断的な利用ができ難い体制になっているケースが多いということである。逆に言えば、これらのデータの利用方法や分析次第でいろいろな新しい顧客の発掘や売上の増大になるような宝の山が埋もれたまま眠っていることが多いということにほかならない。

 そこで昨今急速に熱い注目を浴び始めているのがビジネスインテリジェンス(BI)である。ハイテク調査会社のガートナーによれば、BIは、エンドユーザーがシステムと対話することによって、データからビジネスに有用な知識を抽出するプロセスと定義している。従来からもDSSのような統計解析手法がいろいろと開発されてきた。しかしながら、これらは一部の専門家レベルの知識がないと十分に活用できないものが多かった。

 BIはOLAPやデータマイニングやテキストマイニングなどの技術によって、エンドユーザがアイコンなどを使っていちいちDSSなどの専門家の手をわずらわすことなく、ユーザーフレンドリーに膨大なデータの宝の山のなかから有望顧客の発掘や利益の増加要因をみずから発見できるようにするところに特色がある。そこに着目して、SASは従来からよく使われてきたROI(投資効果指標)を意識的にReturn of Intelligenceと呼び変えてBIの重要性を強調している。その結果、BIとの相乗効果が最も高いCRMでも、従来からのオペレーションCRMからアナリティカルCRMへ、更に今後はストラテジックCRMへと変化することによって、IDCが現在は400%位と見ているBIの投資効果指標としてのROIも今後は更に飛躍的に向上していくことになるであろう。
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