e-Japan最前線

<e-Japan最前線>51.電子商取引準則改訂

2003/07/07 16:18

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

売買トラブルの防止へ インターネットオークションの法的解釈を追加

 経済産業省はこのほど、2002年3月に策定・公表した「電子商取引等に関する準則」を改訂し、インターネットオークションに関する法的な解釈を追加した。民間組織である電子商取引推進協議会(ECOM)での議論を踏まえて、トラブルが顕在化しているインターネットオークション分野でのルールを整備、公表したもの。今後も「実際の市場メカニズムのなかで、準則がどのように機能するか」(鳥丸忠彦・商務情報政策局情報経済課課長補佐)を評価しながら、事例の充実を図っていく考えだ。

 準則は、インターネットといった新技術を想定していない民法などの現行法に基づいて、電子商取引に関する法解釈を示している。電子商取引市場はまだ発展・整備段階で環境変化も激しいことから、一般の法律では対応が追いつかないと判断。産業構造審議会情報経済分科会の下に、法律の専門家で構成するルール整備小委員会を設置して準則を運用していくことになった。「昨年3月に公表したあともすぐに、ECOMから新たなテーマに関する意見を聞きながら、改訂作業を進めてきた」(鳥丸課長補佐)と、市場の変化に応じて活発な活動を展開している。

 今回の改訂で、インターネットオークションに関して法解釈を示した主な事例は次の通り。

(1)インターネットオークションの利用者(出品者・落札者)の間で取引トラブルが発生した場合、オークションサイトを運営する事業者が民事上の責任を負うことはないのか。→オークション事業者は原則として責任を負わないと解釈されるものの、信義則上、一定の注意義務を認めることが可能。例えば、警察から盗品情報が提供された出品物をそのまま放置した場合、損害賠償義務を負う可能性がある。

(2)商品を落札した後、届いた物が出品情報と異なっていた場合、出品者は責任を負うのか。→売主たる出品者は、買主たる落札者に対して債務不履行責任を負うと解釈される。

(3)これまで消費者でしかなかった個人が容易に販売者になることができるインターネットオークションでは、個人が商品を販売する場合も“特定商取引法”の規制対象となるのか。→営利の意思をもって反覆継続して販売を行う場合は、個人でも特定商取引法で定める「事業者」に該当し、規制の対象となる。例えば、同一の商品を1か月に100個インターネットオークションに出品するような場合は、特定商取引法に基づき、氏名・住所など一定の事項を表示しなければならないほか、誇大広告が禁止される。

(4)インターネットオークションで個人が商品を販売する場合も“景品表示法”の規制対象となるのか。→インターネットオークションに「事業者」が参加して一般消費者に商品を売買する場合、景品表示法の適用がある。

(5)インターネットオークションにブランド品を出品したり、ネット上の掲示板でブランド品の販売申し出を行うことは商標権侵害に当るか。→「真正商品でない」商品(いわゆる偽ブランド品)を「業として」売買する場合は、商標権侵害となるが、それ以外の場合は商標権侵害にならない。

 インターネットオークション関連以外でも、いくつかの事例が示された。デジタルコンテンツに対してアクセスやコピーのためのID・パスワードをネット上で提供する行為に関しては、ID・パスワードを提供するときに第3者への提供を禁止する契約が結ばれている場合は、ID・パスワードの開示行為は債務不履行に当るとしている。電子商取引では、通常の企業と個人(消費者)との取引に加えて、インターネットオークションなどの個人間の売買が容易となるため、これまで想定されていなかったトラブルが発生する可能性は高い。米国では土地や住宅もネット取引を利用して個人間売買が盛んに行われており、もし日本でも事例が出てくれば事業者を規制する宅地建物取引業法(宅建業法)だけではカバーしきれないだろう。電子商取引の分野では個人間の売買トラブルへの対応が今後ますます重要になる可能性がありそうだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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