進化するJ2EE その真髄とは

<進化するJ2EE その真髄とは>13.高い開発生産性

2003/07/07 16:18

週刊BCN 2003年07月07日vol.997掲載

 「開発生産性」と聞くと開発ツールのできばえを思い浮かべる人が多いと思う。実際、多くのソフトウェア製品の開発生産性は、開発ツールに負う部分が多いのは確かだ。しかし、「J2EEは開発生産性が高い」と言われるにも関わらず、J2EE仕様には開発ツールのスペックは含まれていない。では、J2EEの開発生産性とはいったい何だろうか。(日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部 WebSphere営業企画推進 テクノロジー・エバンジェリスト 米持 幸寿)

 J2EEアプリケーションは、Javaサーブレット、JSP、HTML、EJB、JMS、といったテクノロジーを使う。さらに、ダイナミックHTML(Javaスクリプト)やXMLなどの知識を利用することもしばしばある。さらに、基幹業務アプリケーションの多くはバックエンド・システムと連携させることが多く、UNIXシステムやメインフレームとの連携なども視野に入れる必要があることも少なくない。

 このように多くの技術が組み合わされて使われる理由には、企業システムの開発体制のあり方が関係している。企業システムは多種多様な知識や経験を持つエンジニアが集合して開発を行う。そういう体制で開発の分担やプロセスを組み立てやすいアーキテクチャが必要なのである。J2EEでは、MVC型のアーキテクチャを採用しやすくできており、分業もプロセス化もスムーズに行える。

 また、このような状況で「高い開発生産性」を発揮するための条件は、単一のツールの使い勝手だけでは語れない。さまざまな要素が絡み合って1つのシステムを構成していくことになるのであって、「画面定義」や「エディタ」は重要であるが、すべてではないことは明白だ。

 企業システムの開発生産性を評価するには、もっと広い視野で考える必要がある。システム開発、アプリケーションのライフサイクル全体を見渡して、どの部分がどのように作業されるのか、繰り返し行われる作業がいかにスムーズかを検討する必要がある。J2EEのアーキテクチャは、このような開発プロセス重視のアーキテクチャであり、開発ツールの使い勝手を重視したものではないことを理解してほしい。であるから、当然のことながら開発ツールの使い勝手は、開発ツール・ベンダーの腕の見せ所である。

 近年のソフトウェア開発プロセスは変化に富み、種類も多い。ウォーター・フォール型の開発をいまだに続けている企業もあれば、オブジェクト指向開発やイテレート(繰り返し開発)で生産性を向上させる企業もある。

 あるいは、XP(エクストリーム・プログラミング)やアジャイル開発といった方法でプログラマーの思い付きを俊敏にソフトウェアに起こさせる方法論も評価されている。完全にオブジェクト指向で完成させることのできるJ2EEシステムでは、これらの最新の開発プロセス技法にも十分耐えることができる。

 さらに、システムインテグレータが抜けた後でも標準的な技術でメンテナンスができることが重要である。「作った人にしかわからない」企業システムは、お荷物になりかねない。J2EEで作られたシステムであれば、有識者を見つけるのは難しいことではなく、別のベンダーに依頼しても十分メンテナンスが可能だ。
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