視点
情報モラルの確立へ
2003/06/30 16:41
週刊BCN 2003年06月30日vol.996掲載
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会専務理事
「知的財産戦略大綱」、「知的財産基本法」のもとに、今国会においても著作権法改正が行われた。アニメ、ゲームソフト、映画などの著作物の保護強化として、その保護期間を「公表後50年」から「公表後70年」とした。これは我が国のゲームソフト、アニメなどが国際的に強い競争力をもつことからとくに保護を厚くしたわけだ。また、教育機関の情報化にともないデジタル化された著作物活用の促進のため、「例外的な無許諾利用」の範囲が拡大された。ブロードバンドスクール構想実現化に向けた大きな前進といえよう。さらに、ファイル交換や違法アップロードなどのネットワーク上での著作権侵害行為や組織内で行われる違法コピーや違法送信への対策として、著作権侵害に対する司法救済制度の充実が行われた。簡単に言うと、権利者による「侵害の立証負担」や「損害額の立証負担」を軽減することによって、その保護を強化した。既に来年の著作権法改正に向けて、文化審議会著作権分科会の5つの小委員会が動き始めた。その1つである著作権教育小委員会では、学校はもちろん社会全般における著作権教育の具体的な施策が議論されている。それは「知的財産戦略大綱」によって、知的財産に関する教育手法の研究や教員の知識向上が要請されているからだ。
ACCSは、こうした動きのなかで、情報モラル教育の普及を目的とした教員向けセミナーを、「2003年度情報モラル・著作権教育支援特別プロジェクト」として、全国60か所で展開する。特筆すべきことは、これらは各地の教育委員会が主催する教員研修として位置づけられていることだ。学校現場での「熱」は、つぎに自治体に波及することだろう。情報モラルの確立活動はまさに民主化運動であるからだ。今後、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)、個人情報保護なども睨みながら、いずれ、電子自治体に向かう大きな波となるはずだ。スウェーデンが福祉国家になったのは、徴税や予算措置から始めたのではなく、福祉教育によると言う。そういう意味で、日本が情報立国、知的財産立国を目指すためには、「情報モラル教育」こそが近道だと考えている。
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