e-Japan最前線

<e-Japan最前線>49.六本木ヒルズ

2003/06/23 16:18

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

 今年4月にオープンして、わずか1か月間に635万人もの人が訪れた六本木ヒルズ――。1日平均20万人以上の人出があったわけで、まさに地方都市クラスの街が1つ、東京・港区の六本木に出現したようである。しかも、BCN紙面ですでに紹介したように、最先端のITインフラを備えている。今年秋ごろからは、e-Japan戦略に関連した実証実験も本格的にスタートする予定で、日本がめざすIT国家の近未来の姿を実証し、実感する街としても注目を集めそうだ。

街全体で無線LANが利用可能に

 今月14日から、六本木ヒルズの街全体で、無線LANを利用できるサービス「iSpot」が本格的にスタートした。これまでも新東京国際空港(成田空港)内やホテルなど、限られたエリアで無線LANが利用できるサービスは提供され始めているが、敷地面積約11ヘクタールの街全体で無線LANを利用できるのは六本木ヒルズが初めてだ。今回提供するのは、理経が新宿地区のホテルなどを対象にサービスを開始している無線LANサービス「BizPortal」。六本木ヒルズ内で、規格IEEE802.11b方式の無線LANカードを装備したパソコンで、WEP・ESS-IDを設定してブラウザソフトを立ち上げると、自動的に六本木ヒルズのホームページ(HP)が表示される仕組みだ。

 HPでは、六本木ヒルズ内の店舗やイベントの情報などが検索でき、ここまでならサービス料は無料。さらにインターネットへ接続するには、理経のBizPortalのサービスに入り、クレジットカード決済でIDとパスワードを入手、1日500円、1週間1000円で利用できる。森ビルが理経のサービスを採用したのは、1日単位での利用が可能だったことが決め手となった。「iSpot」のサービスが始まった日、六本木ヒルズのコラボレーションパートナーとして無線LANサービスに協力することになったインテルが、最新のパソコンの活用方法を提案するイベントを開催した。ノートパソコン向け「インテルセントリーノモバイル・テクノロジ」の投入で、モバイル環境でのパソコン利用の拡大を狙うインテルに、森ビル側がアプローチして今回のコラボレーションが実現した。

 「当面は屋外で腰掛けてノートパソコンを開けるようなベンチを増やしたり、店舗内にもiSpotを設置したり利用環境の充実を進めながら、無線LANのアプリケーションを探っていきたい」(中江川潤・森ビルMII事業室課長)としている。森ビルでは、六本木ヒルズのオープンと同時に、会員カード「コミュニティ・パスポート」の配布も開始した。12歳以上の人であれば、誰でも無料でもらうことができる電子マネー「Edy」機能付きのICカード。これまでに約15万人に配布した。

 現在は六本木ヒルズ内で買い物や食事をした場合に利用ポイントをためて金券や食事券に交換できるというサービスを受けられるだけだが、今後はICカードの機能を使っていろいろなサービスを提供する計画だ。「六本木ヒルズを1つの都市だと考えれば、コミュニティ・パスポートは“住基カード”のようなものかもしれません」(中江川課長)。森ビルのICカードを、六本木ヒルズというコミュニティで各種サービスを受けるためのキーデバイスと考えれば、確かに住基カードと類似している。経済産業省が昨年実施したIT装備都市の実験に参加した大和市(神奈川県)が市民に配布したICカードは約9万枚。森ビルが発行した15万枚のICカードを使って、六本木ヒルズでどのようなサービスを実現できるか。今後の住基カードの活用に向けて参考事例となりそうである。(ジャーナリスト 千葉利宏)
  • 1