中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>24.中国ビジネスのリスク (2)知的所有権対策

2003/06/23 20:43

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

 前号では、知的所有権侵害の問題を指摘した。せっかくの投資を無駄にしないためにも、知的所有権対策を念頭に置いておくべきだ。中国ではWTO(世界貿易機関)加盟と前後して、知的所有権を保護しようという動きが目立ってきた。特にソフト産業では、中国ソフトウェア連盟(CSA)を中心に保護制度の構築に努めている。中国政府もそれを後押ししている。(坂口正憲)

 ソフト産業のような知的集約型産業の場合、優秀な人材をどれだけ確保できるかが、成長を左右する。知的所有権がないがしろにされ、企業が潤わなければ人は集まらないし、海外投資も呼び込めない。そのため、ソフト産業を経済発展の推進力と見なす中国政府は、知的所有権保護に力を入れざるを得ない。2002年春には「コンピューターソフトウェア著作権登録弁法」を改正し、中国版権保護センターをソフト著作権登録機構と指定。同センターが登記代理事務所を全国に設立している。ソフト産業の要、北京・中関村にも代理事務所はある。

 中国にも著作権法があり、ソフトには著作権が自動で認められる。ただ、著作権を同センターに登録しておかないと、著作権侵害があっても裁判で争えない仕組みとなっている。日本企業でも、中国法人で開発した製品はなるべく登録すべきだろう。一方、日本で開発した製品を中国市場に持ち込む場合はどうか。中国は92年から、文字・映像作品の著作権を国際的に保護することを目的とし、世界の大半の国が参加するベルヌ条約に加盟している。実は中国では、外国製ソフトの著作権はこのベルヌ条約の下で保護されている。

 無方式主義のベルヌ条約は、手続きなしで著作権を認める。中国での著作権登録があるなしに関わらず、法的効力を持つ。ウィンドウズなど外国製ソフトはこの方式が適用されている。日本製ソフトの不正コピー品が中国で出回れば、このベルヌ条約を盾に中国の法廷で争える。現に、アニメーション作品などで日本企業が勝訴している例がある。中国は法治ではなく人治の国と言われるが、少なくとも国際法上では“法治”を実践せざるを得ない。
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