視点

レガシーシステム

2003/06/09 16:41

週刊BCN 2003年06月09日vol.993掲載

 霞ヶ関を中心に「レガシーシステム」という言葉が流行っている。レガシーシステムとは、言うまでもなく従来のメインフレームを中心に構築されたシステムのことである。流行の理由は、3月25日にe-Japan重点計画特命委員会から「旧式(レガシー)システム改革指針」が公表され、さらに各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議において、関係府省はレガシーシステムの抜本的な見直しに着手し、行動計画を6月までに策定・公表することが決定されたからである。

 政府の資料によれば「年間10億円以上の経費を要する中央省庁の情報システムのうち、件数ベースで約半数、予算ベースで約8割がレガシーシステム」なのだそうだ。これらのシステムをオープンシステム化すれば、かなり経費を削減できそうだ。しかし、レガシーシステムを擁護する声もある。「レガシーシステム=非効率」という先入観は必ずしも正しくない、オープンシステム化だけが合理的な解決策ではない、オープンシステム化にともなうコスト、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス、目に見えないコストや効果を総合的に判断すべきだ、といった意見である。実にもっともらしいが、本当だろうか。

 例えば、現在、インターネット上で最も人気のある検索エンジンであるGoogle(グーグル)は、Linuxで動く5万台強のPCボードで構成されている。5万台と聞くと驚くかもしれないが、1台10万円で計算しても50億円のシステムである。ネット上の30億ページの情報を蓄え、1日に2億件以上の検索をこなしていることを考えれば、きわめてコストパフォーマンスが高いシステムである。

 レガシーが好きなベンダーに任せたら、この100倍の予算でも作れないだろう。オープンシステムは信頼性が低いなどという声も聞くが、Googleが使えなくて困ったことは1度もない。レガシーシステムを擁護するベンダーは、Googleのような斬新で、きわめてコストパフォーマンスのよいシステムを構築する自信もなければ、技術もないというだけの話ではないのか。レガシーシステムという問題の本質は、日本のベンダーやその経営者、SE、プログラマーがレガシーになっていることにあるように思える。
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