進化するJ2EE その真髄とは

<進化するJ2EE その真髄とは>9.いかに作るか

2003/06/09 16:18

週刊BCN 2003年06月09日vol.993掲載

 J2EEでの開発は、難しいのではないか? という意見を良く聞く。実際そうなのだろうか? なぜだろうか? 企業システムはビルのようなものだ。ある程度大きな企業は大きなビルを持つ必要がある。「サッと作って古くなったら捨てる」ような小屋をいくらたくさん持っても企業を支えることはできないし、安心して住むことはできない。小屋を立てるための道具や知識と、ビルを建築するための道具や技術が違うことはあきらかだ。小屋なら日曜大工品で「だれでも作れそう」な気がする。道具も安い。テレビショッピングで宣伝している「ほらこんなに簡単にできたでしょ」ってな具合で作ればいいのだ。(日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部 WebSphere営業企画推進 テクノロジー・エバンジェリスト 米持 幸寿)

 ところがビルを作るときは違う。設計、基礎作り、鉄筋、コンクリート、免震構造、強化ガラスなど、ありとあらゆる部分に「プロの技術」が使われる。誰にでもできそうなほど簡単ではない。道具も高い。そこいらへんでは手に入らない。では、「簡単なのだから日曜大工品をたくさん集めたらビルが作れる」と思うだろうか。それとも小屋をたくさん積み重ねれば、企業を支えることができるだろうか。

 J2EEは、企業アプリケーションというビルを「建築する技術」だ。そこにはプロの技がたくさん隠されており、それらを正しく活用する必要がある。そして、ビルを建築する技術は「経験」と「実績」をもってして、初めて安心して使える技術だ。鉄筋コンクリートで作られた大きなビルを建てても、つぶれてしまったものもある。表面だけ真似してもだめだ。残念ながらJ2EEは「難しい」技術だ。なぜなら「プロの技術」だからである。近年、J2EEサーバーが安価になり、企業に向かないものとも対比されることが多くなったために「難しい」部分が目立つ。それはそれでJ2EEにとっては試練なのだと思う。

 しかし、プロならプロらしく、プロの技術を使いこなそうではないか。そして、使いやすいプロの技術へ変えていくのもプロの仕事だ。J2EEには「作り方の作法」や「上手くいく作り方」というのがある。MVCモデリングやデザイン・パターンと呼ばれるものだ。これらはJ2EE業界でどんどん蓄積されていっており、企業システム建築の知識ベースが構築されていっている。経験を共有し、世界中でJ2EEという「地盤」の上に企業システムを「建築」していく技術と経験が育まれているのだ。

 このような文化は、企業システム管理者、プログラマ、ベンダー、SI(システムインテグレーション)ベンダーなど共通で行うべきプロの活動である。もしあなたがユーザーなら、あなたの企業は大きなビルに住むことができているだろうか。もしあなたがベンダーやSIベンダーなら、お客様に小屋ではなくビルを提案できているだろうか。もう一度、自問自答してみてはいかがだろうか。
  • 1