Japan STOCK

信頼回復目指す企業 投資家心理好転に

2003/06/09 16:04

週刊BCN 2003年06月09日vol.993掲載

3か月ぶり高値水準

 東京市場に強気の声が広がってきた。5月末の日経平均株価は8400円台と4月末につけたバブル崩壊後の安値7607円からは11%上昇。6月2日には8500円台と3か月ぶりの高値水準に上昇した。世界主要国マーケットの中で最も勢いがいい米国のNASDAQ市場は年初から約20%、昨年10月の安値からは40%の上昇になっており、それに比べると戻りは鈍い。しかし、以下のような株価へのプラス材料が多いことを考えると、一段高が有望。

 (1)企業収益は好調。全産業ベースで03年3月期は経常利益が前年比70%増と回復したが、04年3月期は合理化効果の継続にアジアなどの需要増が加わり、15%の増益になる見通し。とくにウエートが高い大手電機各社の業績が回復する。ドル安・円高が懸念されるものの、一方で1ユーロ=140円とユーロが円に対して最高値に上昇、欧州向け輸出に追い風になっている。例えば、富士通は04年3月期は1ユーロ=115円が前提で、1円の円安は2億円のプラス要因になる。

 (2)需給関係が好転。悪役だった年金の代行返上にともなう売りは止まったわけではないが、返上方法についての条件緩和、株価回復で、あわてて売る動きが収まった。さらに、米国市場に比べた出遅れ感から外国人投資家の買いが膨らんでいる。東証の調べでは外国人は5月第4週まで6週連続の買い越し。とくに長期保有を運用方針とする米国の年金基金が大手電機株などに買いを入れている。

 (3)株価下落に危機感をもった企業側に努力の姿勢が見られる。日立は4月末に300億円、8000万株を上限とした自社株買い実施を発表。会社側の前向きな姿勢も好感され、株価は自社株買い発表日(4月28日)の366円を安値に5月末には466円に上昇した。

 また、業績の大幅な下方修正で4月末に株価が急落したソニーは5月28日に経営方針を発表。出井会長は「株価のショック安は我々にもショックだった」としたうえでエレクトロニクス事業の強化を打ち出した。

 (4)IPO(株式新規公開)は相変わらず好調。5月30日に東証マザーズに上場した情報企画(金融機関向け財務・会計ソフト)は買い殺到で上場初日に売買が成立しない人気となった。6月20日にはセイコーエプソン(16日に公募価格が決定)という大物企業の上場が控えている。

 なにより株価の割安感が強いことが注目される。東証1部上場銘柄の平均PER(株価収益率)は今期予想ベースで17倍とバブル崩壊後ではもちろん最低水準で米国株並みの水準に低下。しかも配当利回りは1.3%台という高さ。また、企業の解散価値を示すPBR(株価純資産倍率)1倍を割り込んでいる銘柄が全体の半分以上を占めている。これまでは、割安な株式への資金シフトに不良債権問題が障害となっていたが、それが克服される方向になってきたことが投資家心理の好転につながっている。(有賀勝久)
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