視点
ナポレオン戦争に学ぶ
2003/06/02 16:41
週刊BCN 2003年06月02日vol.992掲載
今、日本では、デフレを克服すれば景気が良くなるという近視的悲鳴が巷に流れ、インフレターゲットというような怪しげな政策がささやかれている。確かにインフレを促進すれば政府を始め、借金をもつ側は債務が軽減され、それが国民のもつさまざまな金融資産と相殺される。物価は上がり、国民全体の生活レベルが下がる。巨大な債務を帳消しにする簡単な手法である。
第一次大戦後の敗戦国ドイツのハイパーインフレ、第二次大戦後の日本も経験したが、歴史を調べると全く逆の健全な方法で巨額の政府債務を返済した例がある。19世紀の英国である。
18世紀後半フランス革命に始まるフランス共和国政治は、英雄ナポレオンを生んだ。1804年から12年にわたる英国への攻撃は、英国が通商や植民地政策により貯めた富を一掃、巨額の戦費調達のための借金を強いた。ネルソン提督とウェリントン将軍の大勝利でナポレオンを撃退したが、巨額の政府債務が残った。
1818年の政府債務のGDP比は210%で、ちょうど現在の我が国と同じである。これをほぼ40年かけて60%に減らした。これにはいくつかの基本的な経済政策があった。
・産業革命による生産性向上と人口の増加政策
・政府の徹底した緊縮財政
・デフレ基調の維持
ここで注目すべきことは次の数字の中の人口増の政策である。
1818年 1875年
政府債務 8.4億ポンド 7.66億ポンド
国民所得 4億ポンド 12億ポンド
1人当りGDP 23.11ポンド 35.7ポンド
人口 1700万人 3300万人
物価指数 160 96
人口増の政策で活性化を図り、産業革命で生産性を上げることで物価指数を半減させ(デフレ)、さらに1人当りのGDPを上げた。我が国もこれ位の大きな政策が出てきてもおかしくない時代になった。
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