進化するJ2EE その真髄とは

<進化するJ2EE その真髄とは>7.利用者のメリット

2003/05/26 16:18

週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載

 J2EEで構築されたシステムを利用する企業は、どんな恩恵にあずかることができるだろうか。(日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業部 WebSphere営業企画推進 テクノロジー・エバンジェリスト 米持 幸寿)

 コラムの第1回で触れたように、アプリケーションを長生きさせることは重要なことだ。Javaでアプリケーションを作ることでこれが可能になる。アプリケーションを長生きさせることは、単に「長く使う」ことだけが重要なのではない。

 例えば、初期開発に1億円、再開発に5000万円かかるアプリケーションを10もつ企業は、5年に1度プラットフォームを刷新する場合、10年目には、合計20億円の予算が必要だ。しかし、アプリケーションがJ2EEのようなオープンな仕様でできており、システム間で移行可能な場合、再開発は必要なく移行だけで済む。移行が1件1000万円だと仮定すると12憶円しかかからない。8億円分の予算を別のシステム開発に向けられれば、より多くのビジネスを改善できるし、アプリケーションの改造に力を入れることもできる。

 また、プラットフォームの選択肢も広がる。J2EEシステムは、基本的にハードウェアやOSに依存しないものが多い。ハードウェアやOSは、ソフトウェアの技術より進化が早く、数年で容量や速度が驚異的な速度で向上する。購入時点で最も投資対効果の大きなものを選択できる点は重要であるし、戦略的にハードウェアやベンダーを選択することは企業にとって重要なはずだ。アプリケーション基盤を決めたらハードウェア・プラットフォームもOSベンダーも自動的に決まってしまうようでは今時困る。

 新しいテクノロジーを新規採用する場合にも長生きするアプリケーションは威力を発揮する。新しい技術を取り入れたいためにハードウェアやOSを使っているものとは違うものに変更したい場合にはもちろん、対応しやすい。また、EJBのような「コンポーネント」としてアプリケーションのコア(中心となる機能)を実装(プログラム化)しておくことで、いろいろな用途に再利用することができる。

 サポート体制などの充実度も重要だろう。J2EEミドルウェアを提供するベンダーや、J2EE対応可能なSI(システムインテグレーション)ベンダーの多くは、開発サポート、技術サポート、障害サポートなどを古くから行っているところが多く、それを充分期待してよい。これはJ2EEというよりはそれを採用するベンダーの責任感と能力によって差異があるので、注意が必要だ。

 J2EEシステムでもう1つよく言われる利点がシステムのスケーラビリティを活用することである。スケーラビリティとは、1つのアプリケーションを小さなシステムから大きなシステムまで対応させられることを意味する。パソコンで開発したアプリケーションをメインフレームで実行することも可能であるし、多層に分れた負荷分散機能なども多くのJ2EEミドルウェアの得意とすることであり、インターネットなどで稼働させるシステムに必須の能力といえる。
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