視点

電子本新時代がやってきた

2003/05/12 16:41

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 文書を読む、新しい環境の提示が始まった。今年後半には、複数の大手電機メーカーから読書用端末が商品化される。これまで、パソコンやPDAといった汎用の装置で読まれてきた電子本ファイルは、読むことに最適化された、これらの新しい器を獲得する。松下電器が4月22日に発表した「ΣBooK」は、紙の本をそのままなぞった見開き型だ。特徴は、徹底した省エネ。イメージを保持する間は一切電力を消費しない記憶型液晶を用い、単三乾電池2本で3-6か月、約1万ページの表示が可能になるという。

 7.2インチ対角、180dpi、1024×768ドットの画面が2つ。今秋発売の第一弾は、白地に青の表示だが、今後、白黒化、カラー化がはかられる。閲覧するファイルは、SDメモリーカードに書き込んで開く。端末の価格は3万円台。装置の販売に加え、同社は電子本ファイルの拡充と、配信事業にも乗りだす。かつて、東芝製のTFT液晶を使って見開き型装置を試作したイーブックイニシアティブジャパンに出資する共に、自ら配信サイトを用意し、大手書店などへの配信用端末の設置も進める。ΣBooK陣営には、東芝の参加が噂されている。

 4月26日から開催されたデジタルパブリッシングフェアでは、凸版印刷が参考展示した「E Ink電子ペーパー」が注目を集めた。マイクロカプセルに閉じこめた白と黒の粒子にTFTの背面板から電圧をかけ、色を付けたいところには黒、地色には白の粒子を表面に集めてイメージをつくる。展示されたものは、ΣBooKの片面とほぼ同じサイズと解像度。イメージの保持にはやはり、電力を求めない。これを用いた読書端末が、今年の暮れ、ソニーから発売されるとみられる。ΣBooKの見開きに対し、ソニーの読書端末は、一画面で構成される可能性が高い。電子本商品に広く採用されている、ボイジャーのttz、シャープのXMDFフォーマットなどに対応してくると予想される。

 商品ファイルの器となることに加え、新しい読書端末にはぜひとも、インターネット上に膨大に蓄積された文書も読めるようにしてほしい。テキスト、HTMLを快適に読めるよう環境を整えることこそ、読書端末事業の成否を分ける鍵となると考える。
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