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<OVER VIEW>ウィンドウズサーバー2003、期待と不安が混在の米市場 Chapter2

2003/05/12 20:44

週刊BCN 2003年05月19日vol.990掲載

 IBM、HP、サンはいずれもマイクロソフトの新OS出現によっても自社サーバー戦略に大きな変更はないという。マイクロソフトのウィンドウズサーバー2003が、ウェブサービスの中核サーバーに躍り出るためには、インテルの新ItaniumサーバーでLinuxとの競合に勝たなければならない。ウィンドウズサーバーが従来のローエンド主体から、ミッドレンジまで領域を拡大するには、多くの課題がある。そのためマイクロソフトはIBMが先行する高性能インテルサーバーで、Linuxと上手に棲み分ける知恵が必要となる。(中野英嗣)

サーバー戦略に変更ない米有力サーバーベンダー

■市場が注目するIBMのIAサーバーOS戦略

 マイクロソフトが発売したウィンドウズサーバー2003(サーバー2003)および関連iWaveの狙いは、次世代eビジネスであるウェブサービスで競合他社を排除して、主役の座を獲得することだ。

 マイクロソフトの次世代環境「.NET」を具現化するのが、新ソフト群である。この狙いはマイクロソフトオフィスシステム改版が、(1)XML対応を強化してアプリケーション間で文書共有を可能とした、(2)情報共有サーバーを加えたことからも明らかだ。

 従って、マイクロソフトの.NETに向う新ソフト群出現で、世界の有力ベンダーがどのような戦略を打ち出すかに注目する米アナリストは多い。

 世界サーバー市場は出荷台数で450万台前後、金額で450億ドル(5兆5000億円)という巨大市場で、有力ベンダーはIBM、HP、サン、デル、富士通、NEC、日立製作所などだ。

 このなかでもIBMがメインフレーム以下すべてのサーバーを手掛けるので、同社のインテルサーバー戦略に市場の注目が集る。

 今やIBMとマイクロソフトは共に40-50億ドルの巨額R&Dを投入する技術開発頂点企業でもある。

 とくにIBMは従来メインフレームやハイエンドUNIXサーバーで培ってきたサーバー技術をインテルサーバーに搭載するEXA(Enterprise X-Architecture)を開発し、これを実装したxSeries440などを発売する。

 当インテルサーバーはハイエンドの「Datacenter Model(データセンターモデル)」ももち、現在は16-Wayだが32-Wayも開発中である。このミッドレンジをすべてカバーするIBMインテルサーバーはウィンドウズ、Linuxが使える。

 このサーバーでIBMがウィンドウズとLinuxをどう使い分けるかも、米業界の関心事だ。IBMのEXAはERP、CRMなど基幹業務サーバーを狙い、マイクロソフトの新サーバーOSの狙う市場と同じであるからだ。

 この重装備インテルサーバーは現在IBMだけが商品化している。しかしインテルが高性能64ビットItaniumの新チップ、Madison(開発コード)出荷を本格化すれば、デル、HP、NEC、富士通など有力ベンダーはミッドレンジで主導権をとれるインテルサーバーを投入する。

 そこでマイクロソフト新サーバーOSがどのような位置付けになるかが、マイクロソフト戦略成否に大きく影響する。

■エンタープライズLinuxへの対抗

 IBMは、02年に出荷した自社メインフレームの15%はLinuxサーバーであると発表した。富士通はインテルと提携し、メインフレームに匹敵するLinuxインテルサーバーを開発中だ。

 これまでLinuxは企業のフロントエッジで多く使われてきたが、03年は「エンタープライズLinux時代の幕開け」が世界業界の共通認識となった。

 IDCはOS別サーバーの世界設置予測を発表している。02年Linuxは350万台、UNIX261万台に対し、ウィンドウズは860万台と圧倒する。05年にLinuxは02年比2.5倍の860万台、UNIXは同3%減253万台、ウィンドウズは同61%増1384万台と予測する。

 いずれにせよ、今後Linuxサーバー出荷は大きく伸びる。英国、ドイツ、フランス、EU、中国、台湾、オーストラリア各政府が行政システムでオープンソース採用方針を発表していることもLinux普及に拍車をかける。

 わが国政府もe-Japanの中核OSにオープンソース採用を検討中だ。またガートナーも02年に8.8%だった世界サーバーOSのLinuxシェアは、06年に29.4%になると予測する。

 ガートナーのシェア予測によると、Linuxはウィンドウズよりも、源の同じUNIX市場を大きく浸食する。

 UNIXのLinuxへのマイグレーションは親和性も高く、容易であるからだ。従って各有力サーバーベンダーはハイエンド、ミッドレンジサーバーでのマイクロソソフト脅威論よりは、UNIXとLinuxの使い分けに腐心しているようだ。

■各社サーバー戦略に影響少ないマイクロソフト新OS

 2003年4月、マイクロソフトがウィンドウズサーバー2003を発売した前後、米有力サーバーベンダーは、新OSに対する見解を公表した。サンは自社OSのSolarisだけなく、Linuxも区分することなく両OSに注力すると説明する。

 売上高低迷に苦しむサンの中核商品はローエンドUNIXサーバーであり、この市場のLinux浸食が最も激しい。従ってサンはLinuxサーバー強化によって、Solarisサーバー販売を犠牲にしても、Linuxサーバー販売を拡大しなければならない。

 またサンは、インテル32ビットCPU「IA-32」のSolarisも強化することを表明し、ここでマイクロソフト新OSが勢い付くことも警戒する。サンはIBMなどと異なり、ウィンドウズサーバーのLinuxによるリプレースにも注力する構えだ。

 HPはサン、IBMなどと異なり、マイクロソフトとも強い絆をもっている。しかし、このHPもLinuxおよび自社UNIX「HP-UX」の市場は従来通りの戦略で守るという。HPはLinuxおよびウィンドウズの相互リプレースは起りにくいと説明する。

 さらにLinuxはローエンドUNIXのリプレースは期待できるが、ミッドレンジ、ハイエンドUNIXへのLinux影響は小さいと考える。

 IBMはミッドレンジを自社PowerとインテルItaniumサーバー強化でカバーする戦略を採る。そして、Linuxも近いうちに8-Wayのミッドレンジまで進出すると説明する。

 さらにIBMはマイクロソフト新OSは「従来のウィンドウズユーザーにアップグレードパスを提供するだけでエンタープライズは新OSに興味を示さない」と強気の発言をする。

 いずれにせよ、IBM、HP、サンなど米有力サーバーベンダーは、マイクロソフト新サーバーOSの出現は従来の自社サーバー戦略に影響を与えないとの見解では一致している。

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