中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>18.中国で欧米顧客取込む

2003/05/12 20:43

週刊BCN 2003年05月12日vol.989掲載

 前号に引き続き、エム・アイ・エス・テクノロジー(MIST、東京都港区)の活動を紹介しよう。同社は今、中国ビジネスを大きく展開し始めている。MISTが力を入れるのは製造データ管理(PDM)システムの分野だ。中国に生産拠点を移転した日本企業では、日中間で製造情報を共有化するPDMシステムの需要が膨らんでいる。特に、この分野で高いシェアを持つ米メイトリックス ワンのソリューション・パッケージ「eMatrix」への引き合いが強い。(坂口正憲)

 そのためMISTは、日本のIT関連企業3社と提携。中国に進出する製造業に対し、eMatrix導入を支援するビジネスフレームを構築した。MISTがソフト開発、提携会社が基本設計やコンサルティングを担当する枠組だ。石川雅邦取締役は、「中小ソフト会社が1社ですべてを完結するのは難しい。得意分野を持ち寄り、体制を強化する」と話す。ソフト開発では、MISTが中国で培ってきたコネクションをフル活用する。中国・大連に設立した開発センター(人員約50人)を中心に、協力関係を結ぶ大学やその関連IT企業、独立系ソフト会社の技術者を動員する。

 大学としては、清華大学、大連理工大学の2校と提携しており、優秀な技術者を確保できる。また、清華大学の関連IT企業である清華柴光集団など4社が中国全土での販売・サポートをバックアップする。さらに、開発協力会社として東軟集団、大連海輝科技が加わっている。両社とも、CMM(ソフト開発成熟度)で最高位のレベル5を有する。

 これだけの開発体制は、大手企業でもなかなか組めない。実際、ある大手製造系システムインテグレータが中国でPDM事業に力を入れ始めているが、MISTが裏方でバックアップする。ITサービス市場が立ち上がったばかりの中国でなら、中小ソフト会社でも十分に存在感を示すことができる。MISTは、このビジネスフレームで2005年までに年商60億円を目指しているが、すでに東芝など日系大手に加えて、仏アルカテル、独大手システムインテグレータのGEDASなど、欧米の顧客も増え始めた。
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