中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>17.従業員30人でJava開発

2003/04/28 20:43

週刊BCN 2003年04月28日vol.988掲載

 今号から、実際に中国と関わり合いながらビジネスを展開する中小ソフト会社を取り上げる。最初に取り上げるのはエム・アイ・エス・テクノロジー(MIST、東京都港区)だ。従業員30人ながら、Java開発に強みをもつソフト会社として知られる。ウェブ環境でPDF帳票を作成できる開発ツール「XINCA」は、大企業を中心に650件の導入実績があり、住友情報システムなど大手システムインテグレータも採用する。(坂口正憲)

 MISTがJava開発に強みをもつのは、IT教育で中国トップといわれる清華大学との提携があるからだ。1998年に清華大学と共同設立した「JAVA技術研究開発室」を拠点に、Java関連製品の開発を進める。清華大学の学生5人が専任で開発にあたっており、技術力の高さは折り紙付き。石川雅邦・取締役シニアコンサルタントは、「98年前後、まだ日本にはJavaを扱える技術者が少なかった。そこで、サン・マイクロシステムズがJavaを発表した直後から、Javaの教育に力を入れていた清華大学へアプローチをかけた」と振り返る。

 今でこそ、中国の大学が産学連携によるビジネス展開に熱心であることはよく知られている。また、優秀な学生を多く抱える清華大学との提携関係を望む日本企業は多い。だが、MISTが清華大学に接触したのは、「日本企業はまったく訪れていなかった」(石川取締役)頃だった。確かに、コネクションがなかったわけではない。MIST設立には、日本にいた中国人留学生が関わっている。MISTの前身は貿易会社で、社長の宮口忠雄氏は、大連市の日本事務所顧問を務めていた経歴があった。

 しかし提携を実現し、その良好な関係を5年以上も続けているのは、日本のソフト会社が誰も中国に見向きもしなかった頃から中国に可能性を見出し、素早く行動を起こしたからである。そしてMISTは、清華大学との提携をバネに、中国ビジネスを大きく展開し始めた。折しも新型肺炎「SARS」騒ぎで、対中投資にブレーキがかかりそうな気配もある。ただ、逆に投資ブームが沈静化、停滞した時こそ、資金力に乏しい企業にとっては進出の好機となる。
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