視点

日中発のデファクトスタンダード

2003/04/14 20:45

週刊BCN 2003年04月14日vol.986掲載

 現在、CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)では、経済産業省、中国国家発展改革委員会の指導のもと「日中官民協力IPv6プロジェクト」に取り組んでいる。これは、2002-04年度の3か年にわたる両国協力プロジェクトで、メインの目的はインターネットの次世代規格IPv6の普及を促進し、インターネットの高度利用の道を開くことである。国家間の交渉ごとだけにそれぞれの事情があり、参加者やスケジュールを詰めるのに時間を要したが、ここにきてようやくスタートを切れる段階を迎えた。プロジェクトを実行に移すための条件がやっと整った形だが、ここで重要なのは、日本製ルータが中国側に認められ、正式に採用が決まったことだ。

 IPv4ルータでは、米国を中心とする海外メーカーが圧倒的な強さを誇ったが、IPv6では中国という巨大な市場で、日本製ルータの実力が正当に評価される場ができたことになる。これにより、今後はビジネスベースで各メーカーが中国へ売り込めるようになり、アプリケーション、コンテンツ関連企業も参加への道が開けた。インターネットの普及が爆発的に進む中国では、すでにIPv4のアドレス不足が問題化しており、世界に先駆けIPv6移行をやらざるを得ない状況にある。

 中国には「CERNET(中国教育和科研計算機網)」という800の大学と研究機関を結ぶ学術・研究ネットワークがあり、現在はIPv4で構築されている。ここが、中国側の本プロジェクト実施機関として、そのIP網のハブである北京清華大、上海交通大、華南理工大(広州)にIPv6ルータを入れ実験するもので、将来的には、現在クローズドネットのCERNETを、IPv6が完成すれば外部に開放する方向にある。

 中国では08年にオリンピックを控え、ITSや携帯電話の急速な普及が見込まれ、そのベースにIPv6を使うことが国家プロジェクトとして検討されている。携帯電話は最先端の3G、3.5Gに続き、2010年代には4Gも始まり、その頃には中国でIPv6が花開いているに違いない。日本と中国が共同でIPv6を利用し、次世代のIT時代に向けたアプリケーションをつくる。IPv4では日中は受け身の立場に甘んじていたが、IPv6ではアジアからの業界標準、デファクトスタンダードを、日中が世界に向け発信していけるのである。これが、ひいては日本の産業発展にもつながっていく。
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