エンジニア、エンジニアと言うな、俺は工学部出ではない、という人もいるかもしれない。だけど間違わないで頂きたい。いままで見てきたように、エンジニアの代表であるワットは工学部なんて出ていないよ。職人さんだよ。好きなことを一生懸命にやった町のおっさんだ。大学じゃ工学部じゃというのは1つのモデルなのであって、そこを卒業したからといってエンジニアになれるわけではない。それはファッション・スクールを卒業したからといって、デザイナーになれるとは限らないのと一緒だ。
水野博之 コナミ 取締役
要は「自分で工夫し、新しいものを見つける」、または「新しいものをつくる」ことのできる人がエンジニアと呼ばれる資格があることになるわけである。後で出てくるであろうマルローニもエジソンも、どうも学歴といっては何もない人たちだが、人類に新しい火を点じたという点で、エンジニアの代表にあげられているのだ。いま一度言うが、「エンジニア」とは「エンジンを動かす人」だ。「エンジンを動かすため」には、まずそれに火を点じないといけないだろう。かく考えれば、何でもよい。「新しい工夫」を通じて「人間の活動」のなかに「新しい火を点じた人」こそ、エンジニアの名にふさわしいのだ。
大学を卒業して、少しばかり数学ができる、というのはエンジニアではない。人の糟粕をなめるようなことをいくらやったってエンジニアとは言わないのである。何か、ささやかでも新しい工夫で新しい一歩を築いた人をエンジニアというのである。学歴とはまったく関係ない。こう考えてくると、何とまあ日本にはエンジニアにあらざるエンジニアが多くいることよ。大企業でもこのような輩がウロウロしだすと危ない。いままではよかった。キャッチ・アップの過程では余計なことは考えないほうがよかったからだ。今は違う。全く違う。(宝塚にて)