e-Japan最前線

<e-Japan最前線>39.IT戦略本部が新体制へ

2003/04/07 16:18

週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載

 e-Japan戦略の見直し作業が大詰めを迎えているなかで、IT戦略本部の民間本部員の顔ぶれが大幅に入れ替わった。6月にはe-Japan戦略に代わる「新IT国家戦略」と今年3月で期限切れとなった各府省行政情報化推進計画のあとの「電子政府構築計画」が正式決定される予定だが、それに先立ってIT戦略本部が新体制へとリニューアルすることになった。国の2003年度予算も、前年度内ギリギリに成立し、約1兆5000億円のIT関連予算も新年度スタート当初から動き出せる体制は整った。

横須賀市長もメンバーに

 01年1月に発足したIT戦略本部もすでに2年が経過し、民間本部員の任期(2年)切れにともなって、今回メンバーの入れ替えが行われたというわけだ。e-Japan戦略の見直しを行うために、昨年11月に設置された「IT戦略の今後の在り方に関する専門調査会」に、IT戦略本部から加わったソニーの出井伸之会長、インターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木幸一社長、慶応大学の村井純教授の3人は、引き続きIT戦略本部の本部員として留任したほかは、メンバーが全て入れ替わった。

 新メンバー5人のうち、東京海上火災保険の石原邦夫社長とNTTの和田紀夫社長は、それぞれ前任者の役割を引き継ぐ形での就任。女性の本部員には、オークションサイトを運営するディー・エヌ・エー(DeNA)の南場智子代表取締役が選ばれた。今回の人選で最も興味深いのが、地方自治体を代表する本部員に岐阜県の梶原拓知事の後任として、横須賀市の沢田秀男市長が就任したことだろう。

 IT戦略本部の本部長でもある小泉純一郎首相のお膝元からの人選となったわけだが、やはり市町村レベルで電子自治体への取り組みが最も進んでいるとの見方から、白羽の矢が立ったと言えそうだ。とくに現在、見直しが進められている新IT国家戦略では、「構造改革」と「新価値創造」の2つが重要なキーワードとなっており、ITを活用して自治行政の業務改革を積極的に推進している横須賀市の取り組みは、先日キーパーソンのインタビューにも登場していただいた摂南大学の島田達巳教授も高く評価していた。

 ただ、横須賀市が実施した業務改革で最も注目されてきたのは、独自方式による電子入札システムである。01年10月に横須賀市が運用を開始した当初は、電子入札システムの標準化を推進している国土交通省が、横須賀方式による電子入札システムの問題点を指摘する文書を総務省に対して提出するなど、システム導入を疑問視する動きも見せていた。国土交通省では、外郭団体の日本建設情報総合センター(JACIC)などが開発した電子入札コアシステム方式を全国の地方自治体へと普及させ、標準化を進める施策を引き続き推進しており、横須賀方式はある意味で目の上のコブ的な存在となっている。

 今回、IT戦略本部の本部員に、横須賀方式を導入した責任者である沢田市長が就任したことで、地方自治体における電子入札システム導入をどのように推進していくのか。地方自治体が混乱しないように基本的な方針を改めて整理する必要があるだろう。新IT国家戦略では、ITを使って構造改革と新価値創造を進め、「医療」、「食」、「生活」、「中小企業金融」、「学び」、「知識・文化」、「就労・労働」、「行政サービス」、「参画」の9つの分野で先導的な取り組みを実施するとの方針が盛り込まれる見通しだ。果たして先導的な取り組みをどこまで具体化することができるのか、注目だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

  • 1