コンピュータ流通の光と影 PART VIII
<コンピュータ流通の光と影 PART VIII>最先端IT国家への布石 第22回 兵庫県(下)
2003/04/07 20:29
週刊BCN 2003年04月07日vol.985掲載
IX会社設立を推進する神戸市、民間企業はIDCを活用へ 西宮市は地域ネットワークに注力
■システム構築の初期投資を市が支援
神戸市では、02年2月から「神戸高度情報化(iDC、IX)研究会」を開催。(1)IXの誘致もしくは接続、(2)接続ISPの確保、IDCを活用した高度情報化の実現、(3)企業誘致、雇用の確保につなげる具体策――などを討議している。
研究会の参加企業は現在79社。高田純・神戸市企画調整局情報企画部マルチメディア推進課主査は、「参加企業の何社かが出資することになるだろう」と見る。IX整備会社が設立された際には、「システム構築の初期投資を含めて、市で一定期間の財政支援をすることが重要だ」としており、3600万円を支援する予定だ。
研究会の参加企業は、IX活用のビジネスモデルを提案しており、現在22種類のビジネスモデルが挙がっている。IX整備会社を設立するのは、「提案されたビジネスモデルをサービスとして実現し、神戸市産業の活性化につなげる」狙い。神戸市が地域ネットワークとして構築した光ファイバー網「神戸MAN」を最大限に活用する。
これらのビジネスモデルを低コストで運営するため、市内にある民間企業のIDCを活用することも計画している。この動きは、兵庫県が県内88市町に参加を促している共同運営システムとは異なるため、神戸市にIDCをもつ企業にとっては大きなビジネスチャンスになる。
神戸市は、「IX整備会社の設立場所から極力近いIDCを活用する」意向。出資企業のIDCを活用する可能性も高い。
神戸市では、市民生活の質向上や既存産業の高度化、新しい産業の集積を図るため、94年6月に「神戸国際マルチメディア文化都市(KIMEC)構想」を策定。99年3月には、「KIMEC構想2010」を打ち出している。
02年度は、神戸市所有の光ファイバーネットワーク網である「神戸MAN」のサービスエリアを拡張。ケーブルネット神戸芦屋と、ケーブルテレビ神戸、京阪神ケーブルテレビ、神戸市開発管理CATV、六甲アイランドケーブルビジョンの5社がエリア拡張を実施した。
予算は、拡張に5707万円、神戸MANの維持管理に3267万円、調査費などに1000万円。03年度は、3305万円の予算を計画している。
■補正予算で地域ネットワークを構築
西宮市は02年度補正予算で、総務省の「情報通信格差是正事業費補助金」をこの3月末に受けた。これを活用し、03年度は地域ネットワークの構築に取り組む。
梁井義和・西宮市総務局情報推進部情報化推進担当課係長は、「総務省から補助金を受けたことにより、03年度はこの事業が中心となる。地域の情報基盤を整えることで、住民へのサービスを充実させる」としており、まずはインターネットによるスポーツ施設や公民館などの予約サービスを開始する予定だ。
西宮市はIT戦略として、「西宮情報化推進計画」を策定し、01年度から05年度までの5年間を実施期間としたIT化に取り組んでいる。
01年4月には市長を本部長とする「情報化推進本部」を設置。庁内には、各部局の総括課長で構成する「幹事会」と、各部局それぞれ2人のIT適任者で構成する「情報化リーダー」を設けることで、全庁的にIT化に取り組む体制を整えた。
特定の課題については、専門的に調査・検討を行う「専門部会」を設置。「統合文書管理専門部会」、「電子入札・調達専門部会」、「電子申請・届出専門部会」の3部会で構成している。
「この専門部会の作業のうち、統合文書管理が進んでいる」としており、03年度の前半までにシステムを構築、テスト稼動を開始する。本格稼動は、04年4月を予定する。
庁内のパソコン導入については、現段階で1500人に配置した。03年度の前半までには行政部門を中心に2000人への配備が完了するという。「情報の伝達という点だけでも、電子メールを活用することで年間1000-2000万円レベルのコスト削減が実現できる」としている。
西宮市は兵庫県が推進する共同運営システムに参加する方向でいる。共同運営システムに関しては、どの申請システムを共同利用すべきかを検討している段階。
梁井係長は「構築する限りは、兵庫県である程度拘束して欲しい」と指摘する。「参加する市町が少なければ、共同運営システムの利用料が高くなり、共同で利用するメリットがなくなる」からだ。
02年度のIT関連予算は、庁内のネットワーク基盤整備を中心に6000万円強だったという。03年度は、地域ネットワークの整備や文書管理システムの構築などを中心に、約10億4000万円を予定している。
◆地場システム販社の自治体戦略 |
ブレインワークス
■将来的には自治体のITコンサルタントにブレインワークスは1993年の設立。中小企業のコンサルタント事業を中心にビジネスを手がける企業だ。
自治体ビジネスについて近藤昇社長は、「コンサルタントの立場からすれば、ベンチャーや中小企業がシステム案件を入札するのが難しい」と話す。
同社では、自治体ビジネスの実績として、兵庫県のサーバーの運用・保守や行政サービスサイトの構築などの案件を受注した。
最近では、このほどオープンした「大阪市社会福祉研修・情報センター」の情報システム構築にも参画したという。同センターは、情報化基本計画から設計仕様、予算決定などを発注者側が全面的に主導し、情報システムをさまざまな企業に分離発注したことが特徴。近藤社長は、「ほかの自治体も分離発注を視野に入れることが重要なのではないか」と指摘する。
自治体ビジネスの売上高は、02年度が約5000万円で、全社に占める比率は10%以下だった。「03年度は、全社の売上高で昨年度の2倍を見込んでいる。自治体ビジネスも2倍の1億円程度に引き上げる」という。
将来的には、「法人ビジネスでのノウハウを生かし、自治体向けにコンサルタント業務を行っていきたい」意向だ。
ドーン
■コスト削減で利益重視の体制にドーンは、自治体ビジネスが売上高の70%を占める。同社は地理情報システム(GIS)を開発し、主力製品「GeoBase」をベースにした事業で、パートナー企業数が250社に達する。
「自治体ビジネスは、地方自治体でのGIS導入が進められているため、地方のシステムインテグレータを中心に新規契約が増え、開発ライセンスが堅調に推移した。ただ、入札企業間の低価格競争が激化したことで、再販ライセンスの売上高が大幅に下回った」と、滝野秀一社長は話す。今年度(03年5月期)上期の売上高は、開発ライセンスが前年同期比20.6%増の8600万円、再販ライセンスが同26.3%減の1億4600万円だった。
下期は、統合型GISを従来の2分の1のコストで実現できる「GeoBaseV7.2」により、統合型GISの入札に際して有利なコスト条件をシステムインテグレータに提供するほか、施設案内や観光案内など、自治体の情報公開に対応した簡易アプリケーションをシステムインテグレータに無償提供することなどで、開発ライセンス、再販ライセンスともに販売を強化した。
また、「民間企業ビジネスも拡大する」ことを視野に入れ、新規需要を開拓。「コスト削減を実現して利益を確保する体制を整える」構えだ。
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