視点

中国の知的財産保護

2003/03/24 16:41

週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載

 IT資産管理ソリューションの大手、クオリティが、上海に「クオリティソフト上海」を立ち上げた。その設立パーティが2月28日に現地で行われ、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)も招かれて、スピーチの機会もいただいた。中国側からは上海版権局や裁判官などの政府関係者、弁護士、大学教授などのほか、コンピュータワールドや解放日報など中国のメディアも多数参加した。

 いま、中国でソフトウェアやコンテンツビジネスを展開しようとしている日本企業は多い。成功させるためには、どのような法律、商慣習、制度があり、さらに文化的、政治的な背景についても、事前に十分調査をする必要がある。とりわけ知的財産制度やその執行手続き、その執行状況は最も気になるところである。ACCSではかねてよりそのような調査をしたいと希望していたが、文化庁長官官房国際課の委託調査として実施が実現した。今回は第一段階として、以下の7つの点をとりあげることにした。

(1)コンピュータソフトウェアの中国本土における流通形態
(2)日本などのコンピュータソフトウェア企業の進出事例
(3)著作権登録手続き(および無効化手続き)の方法
(4)著作権の冒用登録の実態
(5)海賊版の流通・市場の現状
(6)中国における著作権関連団体の活動など
(7)中国における出版に関する規制

 現地での調査は3月7日まで行われ、報告書は4月にまとまる予定である。中国では現在、日本のソフト、アニメ、漫画などの権利侵害が深刻なのは事実だが、改善するためには、知的財産を守るための教育、法制度、電子的保護技術がバランスよく機能しなければならない。中国は緒に就いたばかりであるが、その芽は息吹始めている。現在、中国の若者のヒーローは、毛沢東でも諸葛孔明でもなくビル・ゲイツ氏だそうだ。設立パーティでのスピーチでは、「中国のビル・ゲイツが出てくるためには、中国自身が自立的に知的財産権を守る体制を整える必要がある」と発言した。日本企業のコンテンツビジネスが安心して展開され、中国自身の優れたソフトウェアやコンテンツが創造されるためにも、ACCSは中国の知的財産保護の向上に協力を惜しまない。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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