e-Japan最前線

<e-Japan最前線>37.IT関連02年度補正予算

2003/03/24 16:18

週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載

 今年1月末に成立した2002年度補正予算関連のIT施策が、年度末を迎えて相次いで動き出した。今回の補正は、雇用対策への対応が柱となっただけに、IT関連でも人材の育成や雇用に対応した施策が目立つ。一方で、これまで目玉とされてきた公共施設管理用光ファイバーの整備や電子カルテの導入推進などの予算が大きく縮小。現在進められているe-Japan戦略の見直しにともなって、IT関連予算の見直しも進みそうだ。内閣官房IT担当室のまとめによると、02年度のIT関連補正予算は約2879億円。前年度は2度、補正予算が編成され、1次補正で841億円、2次補正で3908億円の合計4749億円と比べると、4割減となった。

人材育成に重点をおく

 とくに大きく落ち込んだのが、国土交通省が推進してきた公共施設管理用光ファイバーの整備・開放だ。昨年秋からe-Japan戦略の見直し作業が始まったのも、ブロードバンド利用可能世帯数などが当初の目標を達成したため。情報通信インフラの整備にともなって、国土交通省の光ファイバー関連予算も前年度補正の1395億円から401億円と3分の1以下に縮小。その分を防災分野のIT化に振り向けた。

 また、文部科学省の校内LANの整備も前年度補正120億円から今回は30億円となるなど、インフラ関連の補正はいずれも大きく縮小している。厚生労働省の電子カルテの普及促進も、前年度補正の349億円から119億円へ大幅な減額となった。前年度は医療保健分野のIT化に向けたグランドデザインが策定された直後で、補正で思い切った予算措置が取られたが、医療機関側の対応準備が進んでいなかった。「普及率は当初の1%から、ようやく3%になったところ」(厚生労働省幹部)とのペースに合わせてアクセルを緩めた格好だ。一方、人材育成関連では新たな事業がスタートした。

 総務省では、高度IT人材育成センター開設支援事業を実施する。すでに01年度から情報通信分野の専門的な知識・技能をもった人材を育成するため、専門技術者の研修を行う第三セクターや公益法人などを対象として運営経費を助成する「情報通信人材研修事業支援制度」を開始。01年度5000万円、02年度7億円、03年度内示約5億円の規模で展開してきた。こうしたソフト面での支援実績を踏まえて、今回は高度IT人材育成センターを開設するための設備機器や教材開発などハード面の助成を行うことにしたもので、予算額は6億円。2月末には、特定非営利活動(NPO)法人、高度IT人材アカデミー(福岡県)、(財)新潟県中小企業振興公社、北陸メディアセンター(石川県)、北海道情報技術研究所(江別市)の4団体に対する助成が決定したところだ。

 経済産業省では、技術経営(MOT=マネジメント・オブ・テクノロジー)力を強化する観点から、MOT人材育成システムを開発・実証する「企業家育成プログラム等導入促進事業」(約29億円)をスタートする。昨年暮れに、IT技術者のためのITスキル標準を策定したところだが、今回は三菱総合研究所を事務局にしてMOT人材を対象とした「MOTスキル標準」を策定。大学や民間教育機関に委託して技術経営教育に必要なプログラム(カリキュラム、教材、事例など)を開発し、実証・評価する。今月13日には、早大、東工大など計46団体が採択候補として選定された。また、厚生労働省の緊急地域雇用創出特別交付金事業(800億円)が計上されている。全額がIT関連ではないものの、IT技術者の雇用機会創出にも積極的に活用できるよう内容の充実が図られている。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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