中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>12.技術適応力広い外注開発会社

2003/03/24 20:43

週刊BCN 2003年03月24日vol.983掲載

 前号までは、従業員1000人を超える大手ソフト開発会社を紹介してきた。ただ、いくら人口が多く、人件費の安い中国でも、1000人を超えるソフト会社は数えるほどしかない。従業員50人以下の中小企業が大半だ。しかし、日本の企業が中国のソフト会社と提携する場合、「企業化がある程度浸透し、大きな案件をこなせる体力がある数百人レベルの企業が最もやりやすい」(日立グループ関係者)と言われる。そうした観点から注目されているのが、北京を本拠とする中訊ソフトウェアである。1994年設立で従業員600人。売上高の9割を日系企業向け外注開発で稼ぐ。00年に4億円だった日系向け開発事業の売上高は02年、10億円に達したもようである。(坂口正憲)

 中訊ソフトが急成長を果たした背景では、NECとの関係を抜きには語れない。94年の設立以来、NECとの関係を深めてきた中訊ソフトは02年10月、NECグループから約1億8000万円の出資を受け入れた。日系企業の中国ソフト会社に対する出資としては、過去最大級である。NECは中訊ソフトの株式の約4割を取得し、役員も派遣する。では、NECが中訊ソフトに惚れ込んだ理由は何か。中訊ソフトは受注人月単価が25-30万円と、エンジニアの人件費が高騰する北京にあっても比較的に安い。ただ、それだけでは魅力にはならない。最大の理由は、「技術適応力の幅の広さ」(NECに近い関係者)だったようだ。

 中訊ソフトでは、500人を超えるエンジニアのうち、ホスト系技術者が3割を占める。中国の外注開発会社は主にオープン系を得意としており、大量のホスト系技術者を擁するのは珍しい。「もともとは中訊もオープン系がメインだったが、NECとの付き合いの中でホスト系の人材を育成してきた」(同)。日本では依然、大型システムでのホスト信仰が根強い。中訊ソフトは、それに開発体制を合わせる。一方で、ウェブロジックやTUXEDO、VoIPなども得意としている。NECソフトとは、01年から日中間でVoIPを利用したIP通信サービスを共同展開する。成功している中国の外注開発会社は、顧客ニーズをきっちりと把握している。
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