e-Japan最前線
<e-Japan最前線>35.官民連携ポータル
2003/03/10 16:18
週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載
行政手続きのワンストップ化を
昨年12月の行政手続オンライン化3法成立を受けて、03年度末に向けて電子申請システムの構築が一斉に動き出している。すでに各省庁ごとのアクションプログラムも策定済みで、まずは約5万件の行政手続きを担当省庁ごとにオンライン化するのが当面の目標だ。しかし、利用者にとって手続きが各省庁ごとにバラバラのままでは必ずしも使い勝手は良くない。「民間調査機関による国別の電子政府成熟度調査で日本が17位に止まっている理由ははっきりしている。行政手続きの一元化、いわゆるワンストップ化が実現できていないため。これを実現できれば、先駆的リーダーと評価されている上位3か国と肩を並べることも可能だ」(牧内勝哉・商務情報政策局情報プロジェクト室長)。これまでもワンストップ化の重要性は認識されてはいたが、各省庁ごとの行政手続オンライン化が進みだしたことでワンストップ化に取り組める環境がようやく整ってきた。牧内室長は、ワンストップ化を実現する方法は大きく2通りあるという。
ひとつは、行政内部で調整して連携を図る方法で、この連載でも紹介した経産省の貿易管理オープンシステム(JETRAS)と財務省所管の通関情報処理システム(NACCS)の連携が代表例。もうひとつは、行政書士や司法書士のように手続きを一元的に処理してくれる第三者機関によってワンストップ化を実現するという方法である。例えば、引越しする場合、住民票を移すだけでなく、さまざまなところに住所変更を届け出る必要が生じる。公的な手続きは住民票を移しただけで自動的に変更する仕組みを作ることも可能だろうが、電力会社や金融機関など民間企業も含めてワンストップ化しようとした場合、行政側だけでは対応が難しい。
行政内部での連携実現も、法律改正などに時間がかかる可能性があり、第三者機関経由でワンストップ化を実現するのは、確かに「現実的な解決策」(牧内室長)である。今回、モデルケースとして経産省では“会社設立”手続きを選んだ。すでに米国では会社設立をインターネットで簡単に行える仕組みが実現しており、日本では1-2か月かかっている手続きをわずか2日で行うことができる。とくにデラウェア州の手続きが非常に簡単なので人気が高く、同州に会社設立が集中する現象も生じているという。
経産省では、官民連携ポータルを運営する第三者機関には基本的に民間事業者を想定しており、民間のアイデアでさまざまな官民連携ポータルが登場することを期待する。「運送会社などが“引っ越しポータル”、結婚式場会社などが結婚にともなう手続きをサポートする“結婚ポータル”と、採算性をクリアできれば、いろいろな可能性は考えられる」(牧内室長)。「競争原理によって、より良い行政サービスが全国に普及していく」とのシナリオも、官民連携ポータル事業の大きな狙いのようだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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