中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>10.日系向け開発トップの実力

2003/03/10 20:43

週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載

 前号で紹介した東軟集団が中国の国内向けソフト開発でトップならば、大連華信計算機技術有限公司(DHC)は、日系企業向けの開発でトップだ。日本市場に熱いまなざしを送る中国の新興ソフト会社にとって、DHCは1つの輝けるモデルである。出発は国有企業だったDHCは、1996年に民営化。早くから日系企業向けソフト開発に力を入れ、特にここ数年は実績を急激に伸ばしている。(坂口正憲)

 01年には日立造船情報システムと提携し、開発センターを設立した。02年4月からは、NTTデータ、日立ソフトウェアエンジニアリング、NECの日系大手システム3社からの出資を受けて、日本との結び付きをさらに深めている。現在では、従業員も1000人近くに達し、02年は売上高が前年比80%増の28億円、利益は倍増と躍進した。売上高の3分の2を日系企業向けソフト開発で稼いでいる。

 では、なぜDHCは日系企業との取り引きを増やすことができたのか。同社と関係者の深いNEC関係者はDHCをこう評価する。「ソフト開発の品質や短納期への対応力は、正直な話、NECの中国子会社より優れている。最近では日本の開発パートナーにも負けない。開発品には不具合が少なく、安心して任せられる」

 しかも、DHCでは経営幹部はもとより、エンジニアにも日本語が堪能な人材が豊富。「コミュニケーションで特に困ることはなく、システム仕様書も日本語で十分通用する」(NEC関係者)と、徹底して顧客の環境に合わせる。当然、顧客満足度は高い。その技術力、品質管理の確かさは、米GEが1月に中国で初となる同社の国際開発拠点(GDC)として、DHCを選んだ点を見てもわかる。

 品質管理手法「シックスシグマ」で知られる米GEは、GDCを担う企業に対して極めて高い水準で開発プロセスや品質の管理を要求する。そのため、世界でもGEのGDCを担うのは、CMMレベル5を有するようなインドのシステムインテグレータ5社だけだった。GDCもそれらの企業と肩を並べた。要求の厳しい日系企業との取引の中で鍛えられたDHCは、世界市場に躍り出ようとしている。
  • 1