WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第145回 オン・デマンド型のiSeries投入

2003/03/10 20:29

週刊BCN 2003年03月10日vol.981掲載

 IBMは2003年1月、わが国を含めて全世界でオン・デマンド対応のeServer iSeries(旧AS/400)5モデルを発表した。IBMはこれらモデルを「フリップ-スイッチ・コンピュート・パワー・オン・デマンド」「オン/オフ・キャパシティ・アップグレード」と呼ぶ。新iSeriesは最大32個のCPUを実装でき、ユーザーは処理ピーク時に自由に休眠プロセッサをオン状態にすることができ、ピークを過ぎればオフに戻せる。このプロセッサの日単位の稼働状況により課金が変動する従量制料金のハードだ。

IBM、グリッドを睨み

 IBMはユーザーの要求に即応してITインフラを変更できる「オン・デマンド・サービス」を次期主力ビジネスに位置づけることを発表している。従って新iSeriesはオン・デマンド型のハードということができる。「この新モデルの発表は、IBMが旧AS/400をiSeriesにリブランディングして以来最大のできごとだ」とIBMパートナーのシリウスコンピュータ副社長、ムディタ・カルナティレキア氏は言う。さらに同副社長は、「今回の発表でIBMは新戦略展開を予告する意図だろう」と付け加えた。

 IBMは単に新しいハードの発表だけでなく、新モデルではLinuxやWebSphere、トランザクション処理などのミドルウェアバンドルを強化して、ウェブサービスのサーバーとしての用途も明確にした。そして、IBMは新しいiSeriesやインテルサーバーxSeriesを構成要素とするグリッドコンピューティング戦略概要も公表した。これらサーバーをベースとするグリッドは金融、ライフサイエンス、行政、自動車、航空機産業をターゲットとする。 IT不況で疲弊する米業界でも次世代eビジネスへのパラダイムシフトを演じると期待されるウェブサービスも徐々に普及し始めている。ウェブサービスでは複数の企業が絡み合うウェブでのトランザクション処理の自動化が実現する。しかしこれには、一時的なトランザクション集中発生という「計算爆発」が起こる。このためIBMは「ウェブサービスの本格的な普及には、計算爆発に対応できるグリッドインフラ利用が必須」と解説している。

 IBMの新iSeriesはサーバーを導入する顧客サイトでオン・デマンド・プロセッシングが実現する。同時に、これらサーバーは企業内あるいは取引先企業を包含してグリッドインフラを構築する際にも、その有力構成サーバーとして転用できる。IBMは新iSeries発表直後、グリッド用ミドルウェアプロバイダのプラットフォームコンピューティング、データシナプスとのインテグレーション契約を結んだ。IBMはグリッドはSMB(中小企業)でも必須のITインフラになると強調している。今回のiSeriesの主力市場はSMBだ。IBMはSMB向けにサーバーiSeries、ストレージ、ミドルウェアWebSphere、DB2、チボリを統合したグリッド総合戦略を近々公表すると米業界は観測している。(中野英嗣●文)

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