視点

無線ICタグ

2003/03/03 16:41

週刊BCN 2003年03月03日vol.980掲載

 朝、出勤しようとすると玄関でピッピッと音がなる。下駄箱の上に置いた小さなスピーカーから「定期入れを忘れていますよ」とメッセージが流れる。ポケットを探ると、確かに定期入れがない。危うく定期を忘れて、昼食1回分相当のお金を損するところだった。そんな忘れ物チェックをするシステムがすぐに登場するかもしれない。原理は簡単である。無線ICタグを財布、時計、手帳、PDA、鍵、定期、メガネなどに付けておき、玄関にパソコンに接続した無線ICタグのセンサー(リーダー)をおけばよい。

 持ち物に貼り付けた無線ICタグに記録されている情報を読み取り、その持ち主を推定し、持ち物リストと照らし合わせて忘れ物を警告すればよいのである。少しプログラムを工夫すれば、家族全員で使えるし、不審者のチェックも可能だろう。無線ICタグはすでにさまざまな分野で利用されつつあるが、大ブームになるのはこれからである。まず誰でも思い浮かぶのは、商品の在庫管理である。商品管理の分野では既にバーコードが利用されているが、この代わりにICタグを用いれば商品管理作業が格段に効率化される。

 ICタグとリーダーは無線で交信するので商品に手を触れることなく商品情報が読みとれる。例えば、アパレル製品にICタグを付けておけば、箱やカートンに入ったままで入荷チェックが可能になり、棚卸し作業もきわめて短い時間で済むだろう。ハードディスクを製造しているシーゲートは、ICタグを生産・試験工程で利用しているし、フィンランド航空では搭乗チケットにICタグを利用する実験を行っている。ビデオやDVDのレンタルチェーンで利用され、貸出・返却処理に要する時間が大幅に短縮されたという事例も報告されている。

 ニューヨーク市警の本部では、外来者のパスにICタグを埋め込み、訪問者が部外者立ち入り禁止エリアに入らないように監視しているというし、日本のある地方自治体の職員食堂では、ICタグを食器に付けることによって会計をスムーズにすると同時に、その食事で摂取できるカロリーや栄養価を計算してくれるシステムを導入しているという。ICタグを利用したシステムのアイデアはまだまだ出てくるだろう。ワクワクしているのは私だけではないと思う。
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