WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第143回 IBM、ロータス部門トップ交代

2003/02/24 20:29

週刊BCN 2003年02月24日vol.979掲載

 2003年1月、IBMはロータスソフトウェア部門最高責任者を、3年間同ポジションにあったアル・ゾラー氏から、ソフトウェアストラテジスト、アムジブ・ゴーヤル氏に代えた。IBMはロータス部門の不振から02年7―9月にソフト売上高が前年同期比3%減少してしまった。「IBMは同部門責任者の交代で、ロータス商品のメイン市場を従来のエンタープライズからSMB(中小企業)重点へと変更する」と多くのロータスパートナー経営者は語る。

メイン市場をSMB重点へ転換

 さらにIBMは、これまでSMB市場をマイクロソフトの意のままに任せていたが、エンタープライズのIT投資が大幅に減少している米国である。このためにもIBMは自社ソフトでもSMB重点戦略に切り替えなければならない。

 ロータス部門パートナー、ウォルコット・システムズ副社長、デービッド・ヴィア氏は、「IBMはロータスチャネルをソリューション指向の観点から再強化しなければならない。ロータスパートナーは世界で数年前の1万2000社から最近では7000社と激減したからだ」とロータスの苦境を語っている。新責任者のゴーヤル氏は「ロータスチャネル要員を早急に50%増やすことを計画する」と、チャネル強化が当面の課題だという。ロータスが伸び悩んでいるのは、エンタープライズでのロータスシェアが高かったこともあり、その需要が一巡したことも要因である。

 従って、ゾラー氏の上司、IBMソフト部門執行副社長、スティーブン・ミルス氏もゾラー氏の功績を次のように称える。「ゾラー氏はロータス部門のカスタマーとの関係を大幅に強化し、さらにロータスのIBM同質化戦略を強力に推進した功績は大きい。ロータスも従来商品だけでなく、これからはeラーニングのロータス・ラーニング・マネジメント・システムなど新ソフト拡販と、IBMのミドルウェアWebSphere、DB2との統合に全力をあげる。このような戦略転換のためにも責任者交代が必要だ」

 米コンサルティング会社アルバート・アソシエイツ社長のサム・アルバート氏は、「ロータス部門責任者交代は、同部門のパートナー戦略強化によるSMB進出に良い結果をもたらすだろう。IBMはこれまでも度々、部門トップ交代によってマネジメント力強化を実現してきた。ロータスソフトの廉価版Expressの発売と、これらとのIBMミドルウェアの統合はIBMのSMB市場での拡販に大きく寄与する筈だ」と責任者交代を評価する。

 IBMは自社の強力なSMB向けチャネルでロータスの販売拡大を狙っている。そのためにも同社幹部は、ロータス責任者はIBM戦略やIBMチャネルを熟知したIBMerとしての経歴の長さも重要だと考えている。IBM文化とのさらなる同質化推進のためにも、IBMerとしての社歴が要求されるのだ。IBMerとしての経験は前任者ゾラー氏の26年に対し、後任ゴーヤル氏も21年とひけをとらない。IBMはロータスのSMB戦略強化を第1弾として、さらにSMB市場に注力する。(中野英嗣●文)

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