WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第142回 IBM、低価格Linuxサーバーを強化

2003/02/17 16:04

週刊BCN 2003年02月17日vol.978掲載

 今年に入ってIBMは長年、サン・マイクロシステムズ、ヒューレット・パッカード(HP)の後塵を拝してきたUNIXサーバー「pSeries」で、低価格、高性能化に加え、Linuxサーバー機能を強化した先行打倒戦略を打ち出した。IBMのサミュエル・パルミサーノCEOは同社各営業部門の責任者であった間、それぞれの分野で最強の競合社を打倒するため、相手に痛みを与える「ペインプロジェクト」を展開したことはよく知られている。

サン打倒の「ペインプロジェクト」

 今回のサン対抗戦略である低価格「P630、P650」の発売は、UNIXトップのサンを狙ったものであるのは明らかだ。現在IT市場の牽引はもはやハードではなく、ITサービスであることは誰もが認める。しかし、ITサービスは「強力なハード基盤」の上で展開されるビジネスだ。

 従って、世界のIT業界では「ハードを制するベンダーがITサービスの覇者になる」との再認識も高まっている。しかし、ハードは価格破壊が激しくサーバーやストレージで高い利益率を確保するのは難しい。そのため業界が再びハード競合に回帰しても、それは高額利益を求めるのではなく、サービスユーザー確保の狙いに移っている。

 IBMのP630/650はいずれもIBM UNIXサーバーの旗艦「レガッタ」と同じプロセッサPower4を搭載し、IBMが注力している「オートノミック(自律型)コンピューティング」の開発成果を採用し、ユーザーが要請する自己管理機能による高い安定性を誇る。IBMはオートノミック開発で先行しており、当技術採用で他社との差別化を急ぐ。P630/650はいずれもIBMのUNIX「AIX」と共にレッドハット、SuSEのLinuxによるピュアLinuxサーバーとしても利用できる。米国でのP650と同等他社サーバーが5万ドルからであるのに対し、650は最小構成2万9995ドルと、他社より40%も低価格だ。

 この低い価格設定に驚いたと、IBMパートナー、インフォシステムズのクレイ・ハーレ社長は次のように語る。「この価格表がIBMから送られてきた時自分は、ただちにこれは間違った表だと思い、IBMに正しい価格表を要求した。しかしIBMはその価格表は正しいと伝えてきた」。同社長は、「この価格は魅力的であり、サンやHPユーザーは次のUNIX/Linuxシステムでは、IBMサーバーを使いたいと要求している」としている。

 HPはIBMの安い価格に対して「当社Itanium2ベース・サーバーはHP-UX、ウィンドウズ、Linuxの3つのOSが走るが、IBMサーバーではウィンドウズが使えない」とIBM戦略への対抗をあらわにする。これに対しIBMのpSeries担当GM、アダリオ・サンチェ氏は次のように反論する「UNIXユーザーはウィンドウズには関心がない。IBM戦略は現在のUNIXユーザーに、いつでもLinuxへの移行が同一ハードで可能になったとの強い安心感を与えることが第1の狙いだ。この狙いはP630/650の発売でUNIXユーザーへ十分浸透した」
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