中国ソフト産業のいま
<中国ソフト産業のいま>6.日本に学ぶソリューション
2003/02/10 20:43
週刊BCN 2003年02月10日vol.977掲載
前号では、清華大学などトップクラスの大学でも、日本企業への就職を希望する学生が増えていると述べた。それは高い給料をもらいながら、最新ソリューションに携われるからだろう。
中国最大のシステムインテグレータ、NEUソフト(ニューソフト)の高堰茂・日本法人社長は、「我々が最も重要なパートナーと考えているのは日本のソフト会社。狙いは受託開発の請け負いではなく、日本の進んだソリューションを学び、中国市場に持ち込むことだ」と語る。
NEUソフトは社員5300人。IBMやHPなど欧米大手ベンダーとも深い提携関係にある。日本のソフト会社では日本IBMしか取得していないと言われる、CMM(ソフト開発成熟度)レベル5を保有する。極めて高い開発力をもつシステムインテグレータである。
その同社が日本勢のソリューション力を評価する。「ツールやプラットフォーム製品は欧米系が優位だが、それらを生かすソリューションでは、日本がかなり進んでいる」(高堰社長)。
ソリューションと言うと漠然としているが、社会基盤から企業システムまで多岐にわたる。コンビニにATM(現金自動預払機)を設置できるのは、金融ネットが発達しているからであり、宅配会社の荷物追跡システムなどは世界で例がない。
コンピュータ科学やコンポーネント技術は学校でも学べるが、ソリューション力は、社会や企業の要求によって鍛えられる。
経済が発展途上の中国では、社会や企業のIT化需要は芽生え始めたばかり。中国ソフトウェア産業協会常務理事も務める劉積仁・NEUソフト会長は、先日の世界経営者会議で「中国のIT投資は、まだ日本の1985年前後の状況」と指摘した。
今まで中国のソフト会社は、技術力を生かしたソリューション力を磨く機会が少なかった。この点では、需要家によって鍛えられてきた日本のソフト会社と大きな差がある。当連載のテーマである日中共栄のカギは、ここに潜んでいるように思う。
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