視点

ネットワークの足元の強化を

2003/01/27 16:41

週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載

 IP電話が普及しつつある。既存のIPネットワークをインフラとして、電話機能を付加できることから、投資コストの低減ということでメリットがある。反面システムの信頼性、特に、運用性という面では不安がある。1つは、電源のバックアップ、もう1つは、雷対策である。サーバーの無停電化は進んでいるが、ネットワークを構成するルータやHUB(ハブ)の対策はそれほど進んでいない。このようなインフラをベースに安易にIP電話機能を付加するのは問題であろう。

 さらに、雷対策を適切に行うのはかなり難しい。誘導雷、直撃雷、側雷などに的確に対策を講じているネットワークはほとんど導入されていない。先日も、ある学校のキャンパスで運用しているHUBが雷で破壊された事例に出会った。複数の建物間にイントラネットを敷設して運用していたが、その中の1つの建物が被雷し、建物間を接続している複数のルータとHUBが壊れてしまったというものである。

 建物間の接続は通常の銅ケーブル(CAT5)であった。症状を見ると、いずれも機器の電源は生きていたが、通信系統の制御回路が破壊されていた。雷対策は、本来建物レベルで行うのが原則であるが、完全に対策を講じることは難しい。というのは、雷電流は単なる直流ではなく、インパルス電流である。周波数成分として、直流から数十MHzまでの強度の雑音電波エネルギーを有する。落雷した場合には、高周波成分がネットワークの縦幹線に誘導起電力を励起して、ネットワーク機器を破壊することがある。

 特に複数の建物でのネットワーク接続においては、1つの棟に落雷すると、それ以外の棟との電位差が瞬間的に数千万ボルトになり、この間を銅ケーブルで接続していれば、機器の破壊は免れない。建物間の接続は少なくとも光ファイバー化する必要があろう。さらに、同一の建物内でも、要所は光化するか、サージ電圧対策を実施する必要がある。それにしても、従来型の電話システムは、100年以上の歴史があるとはいえ、ロバスティックであることを改めて認識させられるとともに、安易にIP電話システムをIPネットワーク上で展開することの危険性を意識させられる。電源対策については、次の機会で述べたい。
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