中国ソフト産業のいま

<中国ソフト産業のいま>4.米国越す技術者輩出国

2003/01/27 20:43

週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載

 12万人対47万人――。これは、2001年の日本と中国の理工系学士取得者数を比べた数字である。前号まで中国ソフト産業と政治との関わりを見てきたが、知識集約産業の発展を考える上で、教育は政治と同等に重要な要素である。

 中国は現在、大学進学ブームに沸いている。99年に130万人だった大学進学者は02年、倍増以上の280万人に達したと見られる(日本は60万人)。それでも大学就学適齢人口(18-22歳)の14%でしかないが、これだけ一気に高等教育経験者が増加した例は世界史上にないだろう。

 筆者が知る限りでも、上海辺りでは、経済的に中流に達しない家庭でも、子供を大学へ進学させる例は珍しくない。そして驚かされるのが、理工系学部に進学希望する学生の割合の高さである。その中でも情報処理工学は機械工学と並び人気が高い。

 例えば、大学進学を控えた上海の高校生・劉明は「ITエンジニアは給料も良く、仲間内でも人気の職種。将来は自分の会社をもちたい」と語る。経済が発展途上の中国では、若者が実利に聡い。どんな技術を習得すれば、豊になれるかを考える。

 それを煽るように、中国の中央、地方政府は理工系大学の整備拡充に余念がない。それは清華大学など首都の有名校だけではない。実は、中国の最難関校は、日本人に馴染みが薄い安徽省に位置する中国科学技術大学だ。

 中国では最も優秀な学生は法学部ではなく、理工系に集まる。内陸部の武漢や西安の大学も毎年、数千人規模でITエンジニアを輩出すると言われる。それぞれの大学は産学連携に積極的で、雇用機会の創出にも取り組む(詳細は次号以降で記す)。

 もともと中国人は、文化に根ざした儒教から子供への教育熱は高く、民族的にも学習能力は低くない。生活が豊になり、高等教育を受けられるようになった3世、4世の中国系アメリカ人が米国IT産業の一躍を担っている現実がそれを証明する。

 教育というマグマが噴き出し始めた中国は、間違いなく2、3年先には米国を抜いて、世界最大のITエンジニア輩出国になる。それは、日本のソフト産業と無縁のことではない。
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