中国ソフト産業のいま
<中国ソフト産業のいま>3.ソフト産業と政治(下)
2003/01/20 20:43
週刊BCN 2003年01月20日vol.974掲載
ソフト産業と政治の関わりで言えば、さらに重要なファクターが地方政府の存在だ。共産主義国家と言えば中央集権のイメージがあるが、中国経済は「諸侯経済」と呼ばれ、地方政府が権限をもち、リードしている面が圧倒的に強い。中国内部では、「省」「市」「県」、果ては「村」という行政区分同士が激しい地域間競争を繰り広げる。
先に発展した製造業で見ても、香港と隣接する広東省がいち早く外資誘致に動き、電子機器の生産基地を形成、その中でも東莞市など一部地域が飛び抜けた経済発展に成功した。これに触発されたほかの地方がこぞって市場経済モデルを導入し、国全体で製造業の急成長を成し遂げた。
中央集権国家でほぼ均一に経済発展している日本にいると想像しにくいが、現在の中国では隣接する地域で、経済格差が何十倍、何百倍にも開く。無為無策の政府が支配する地域は立ち遅れたままだ(日本のように地方交付税で均一化されない)。この地域間の競争原理は、ソフト産業の発展においてもプラスに働くだろう。製造業で立ち遅れた地域が挽回を図る手段になるからだ。
例えば、内陸部の西安市(陜西省)は製造業の集積で沿岸地域に比べて立ち遅れた分、ソフト産業の育成に力を入れ、NECなど日系企業の開発拠点誘致に成功する。また、北部沿岸の大連市(遼寧省)も「ソフト産業国際化モデル都市」として、同じ北部にある北京や天津との差別化を図る。大連理工大学など関連教育機関を整備し、ノキアなど大手外資を呼び込んだ。外資の誘致から教育機関の整備まで地元政府が主導した。中央政府による中長期的な産業政策(重点大学の整備など)と、目先の“豊かさ”を追う地方政府の組み合わせ。これが中国ソフト産業を押し上げている。この均衡が続く限り、高度成長を維持する可能性は高いだろう。
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