大航海時代
<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第65話 今までの仕組みから抜け出せ
2003/01/13 16:18
週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載
メガチップス 取締役 水野博之
「眼力」とは何か。文字通り「物事の本質を見抜く力」である。世にゴマンといる「アントレプレナー」の本物を見抜く力ということになると、その前提の最たるものは「技術力」であろう。最近は多少変わってきているようだが、日本の銀行は文系の人たちから成り立っている。私たちの若い頃は学校を出て銀行に行くというのはほとんど100%経済を専攻した秀才であった。コンピュータが導入されだしてから、多少理工系を入れるようになったが、これはコンピュータのオペレータとして入れたのであって、経営の中核にすえる気も何もまったくなかったように見える。当然のことながら、応募する方もそのあたりは分かるから、限られた人間ということになってしまう。こうして、旧大蔵省の言うままに金を集め、動かしていれば、床の間に座っておれる時代が長々と続いたのだ。その金融の基本をつくった旧大蔵省も仕組みは全く変わらなかった。
この構造は財務省と金融庁に分けたからといって本質的に変わってはいないわけで、こうして自らのつくった床の間に安住しているうちに、世界の金融情勢は激変したのであった。そういえば、いまだに財務省や金融庁が理工系卒業者を大量にとったという話は聞いたことがないから、こちらのほうは、銀行よりもっと程度は悪いかもしれない。こんなのが、日本の金融や産業の構造改革のプランをつくっているとすれば、改革の結果は暗澹としているといってよい。
現在の世界の金融を動かしているのは、物理数学を縦横に駆使して新しきポートフォリオをひねり出し、新しき産業をバックアップしている連中なのであって、ここでは、あらゆる物理、数学、工学のツール(いわば人類が達した科学技術の成果)が使われているのだ。今までの仕組みからいかに一歩出るかということが問われているのである。(宝塚中山にて)
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