WORLD TREND WATCH
<WORLD TREND WATCH>第137回 ボーランド、EDS買収の噂
2003/01/13 16:04
週刊BCN 2003年01月13日vol.973掲載
駆け巡る米業界
ウォールストリート投資筋も2つの噂を真剣に追い回した。02年12月中旬、あるプレスカンファレンスでマイクロソフトのビル・ゲイツ会長がIBMのソフト会社「ラショナルソフトウェア」買収の金額、21億ドル(2500億円)以上の買収投資も考えていると発言したことが、ボーランド買収へと拡大解釈されたようだ。
この噂の出る前にボーランドのデール・フュラーCEOが「世界の有力メーカーが独立系ツール開発事業者の重要性を認識している」との発言を繰り返したことも、買収話の駆け巡りを加速したかもしれないと、ウォールストリートのある投資アナリストは発言する。マイクロソフトの噂が出始めてから1週間後の12月下旬、今後はIBMによるEDS買収話が誠しやかに流布した。噂話はいつも途方のないものだが、この不況下、何が起きても不思議ではないとの意識が米業界には強い。また、パルミサーノCEOは「IBMが世界最大のITサービス会社だといっても、全世界4500億ドル(54兆円)の巨大ITサービス市場から見るとわずか8%シェアを握っているニッチ企業に過ぎない」と繰り返し発言している。このことも、プライスウォータハウスクーパース・コンサルティング(PwCC)買収に続いてEDS買収までのIBM戦略拡大の推論の根拠になったようだ。
米調査会社フォレスターリサーチのジョージ・コロニー社長は、多くの投資筋がIBMのEDS買収の可能性について質問してきたと前置きして次のように解説した。「自分はこの買収話の真偽はわからない。しかし、IBMはオン・デマンド方式の新しいITサービス戦略を発表しているので、もしこの買収が実現すれば、IBMはどこも対抗できない巨大で、しかも強力なホスティングプロバイダになるのは間違いない」
一方、この噂で米法曹界も色めき立った。その理由は「米司法省はマイクロソフトをアンチトラスト法違反でいろいろ制約を加えようとしたが、結果はマイクロソフトの全面勝利となった。一方、IBMはマイクロソフト以前にはいつも独禁法違反容疑対象になっていたが、いつもIBMに逃げられていたという記憶は消えていない」というものだ。マイクロソフトに代わって再びIBMがアンチトラスト法の対象になるとの筋書きも、米法曹界は描いていたようだ。マイクロソフト、IBMともに噂を全面否定するが噂は消えたわけではない。いずれにせよ、長引くIT不況下、強者の数は絞り込まれその強さは買収パワーまでに及んでいる。デルも有力サービス「米プルラル」を買収したからだ。
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