e-Japan最前線
<e-Japan最前線>26.産業発掘戦略
2003/01/06 16:18
週刊BCN 2003年01月06日vol.972掲載
「ITライフスタイル革命」の実現へ
産業発掘戦略は、2002年6月に経済財政諮問会議が策定した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の中の経済活性化戦略として打ち出された6つの戦略のうちの1つ。日本が国際的に競争力が強いと思われる4つの分野「環境・エネルギー」、「情報家電・ブロードバンド・IT」、「健康・バイオテクノロジー」、「ナノテクノロジー・材料」について年内に具体的な戦略を策定することが決まり、情報家電・ブロードバンド・ITの分野のタスクフォースには、村井純・慶大教授、大山永昭・東工大教授と、各省庁の課長クラスが参加して検討を進めてきた。産業発掘戦略では、まず将来実現される社会像としてITライフスタイル革命を目指すという方向性を示し、それを実現するため短期的(3-5年後)な戦略目標を設定した。将来実現される社会像としては、「個人の多様な嗜好に応じて、家庭にいながらショッピングや映画鑑賞ができる」、「インターネットによる対話型学習などの学習環境が実現する」、「在宅勤務が普及する」、「患者の自由な選択による質の高い医療、在宅・テーラーメイド医療、遠隔医療・介護を実現する」などをイメージ。
これを踏まえて、具体的な戦略として、(1)ブラウン管に比べ消費電力が3分の1以下の壁掛けテレビの実用化、(2)テレワーク人口の拡大(07年560万人)、(3)自由な情報空間におけるセキュリティ技術の確立、(4)在庫・物流管理などへのICチップの活用、(5)ビジネス用多言語自動翻訳システムの実用化、(6)IPv6の普及などによる情報通信関連市場の拡大――などがテーマアップされた。
しかし、こうした技術戦略を進めるうえで難しいのは、新技術による新しい市場をどのように立ち上げるか、だ。自動車分野で考えると、VICS(道路交通情報通信システム)は、カーナビゲーションシステムと融合して一気に利用が拡大したが、高速道路での実用化がスタートしたETC(ノンストップ自動料金収受システム)のようになかなか普及に弾みがついていない技術もある。ETCもきっかけさえあれば一気に普及すると考えられるが、そのきっかけをどう作るのがポイントだ。
産業発掘戦略では、新技術を先導するために政府調達を戦略的に活用する方針が明確に打ち出された。米国でも軍事・宇宙利用目的に開発されたインターネットや燃料電池などの技術が民生転換で花開いたわけで、日本でも政府調達を戦略的に行っていこうというわけである。
具体的にはIPv6対応の情報通信ネットワークシステムや、ICチップやRFIDを使った国立・公立図書館所蔵の図書管理システム、テレビ電話システムなどをあげている。また、行政情報システムの政府調達に関しても、97年12月に閣議決定している「行政情報化推進基本計画の改定について」に盛り込まれている「オープンシステム化の推進」を念頭において開発することを改めて明記。政府の新しい施策として注目されているオープンソースソフトウェアによる情報システムを積極的に推進していく方針を打ち出している。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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