WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>第136回 Linux市場は分散型へ移行

2003/01/06 16:04

週刊BCN 2003年01月06日vol.972掲載

 IBM、ヒューレット・パッカード(HP)、サン・マイクロシステムズ、あるいは富士通、NECなど世界の有力ITベンダーはこぞって、Linuxのスケーラビリティアップに注力している。また有力ベンダーが設立した「オープン・ソース・デベロップメント・ラボ」もIBMのLinuxメインフレームを設置して、より多くのCPU並列システムが高速に走るLinux開発を推進している。2003年には、SGIがインテルItanium2を64個並列して搭載するLinuxサーバー「Origin3000」も開発する。

世界のITベンダーが注力

 しかし欧米において最近、Linuxのこのようなスケーラビリティだけの追求では、同OSに大きな市場が開かれないという懸念の声が強くなった。ハイエンドサーバーは今後市場が大きく伸びるわけでなく、しかもそこでは既にUNIXやメインフレームOSが市場を占有してしまった。Linuxが独自に狙うべき市場は、「分散コンピューティング環境」だというのが、これら提言者の意見だ。米調査会社イルミナタのシニアアナリスト、ゴードン・ハフ氏は「Linuxのこれからの進むべき道は、IBMのLinuxメインフレームの使われ方が示している通りだ」と前置きして次のように説明する。

 「Linuxメインフレームでは何十、何百の内部パーティションで、それぞれLinuxが走って理想的な分散コンピューティングの環境を創り出した。メインフレームのパーティションが何百単位から何千まで拡張できるのは、メインフレームにスケーラビリティが備わっているからだ。このスケーラビリティ追求はメインフレームに任せておけばよい。そして、メインフレームの各Linuxパーティションで何が行われているかをじっくり分析することが重要だ。そこにLinuxの真の市場が示唆されている」

 ハフ氏は「メインフレームLinuxパーティションで処理されているのは、すべて部門レベルのタスク、ウェブのフロントエンドの制御ジョブである暗号処理、ロードバランシング、ウェブサイトへのアクセスなどだ。これでLinuxが分散環境を統合してオペレーションを簡素化するOSとして優れていることを実証する」と補足する。ハフ氏は「Linuxの真髄はスケーラビリティではなく、分散コンピューティング必須の横並びのジョブを統合することだ。このLinux特性は多数のパーティショニングが作れるメインフレームだけでなく、多数のサーバーをラックに収容するブレードサーバーにも適合する」と主張する。

 シティバンクのIT設計マネージャー、ヨーク・ベニン氏もハフ氏の主張に同意して次のように語る。「わが社もスケーラビリティ重点分野はIBMメインフレームOSやUNIXを期待する。われわれがLinuxに望むのは、これまでハイエンドOSで利用してきたミッドティア・アプリケーション性能がLinuxで十分発揮されることだ。そうなればLinuxは大企業の各部門、中堅・中小企業ミッションクリティカルで大きな市場を獲得できる。それがLinux本来の役割だ」(中野英嗣●文)
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