WORLD TREND WATCH

<WORLD TREND WATCH>連載第135回 オンデマンドへ中小SIerを集結

2003/01/02 16:04

週刊BCN 2002年12月23日vol.971掲載

 IBMのサミュエル・パルミサーノCEOは2002年10月下旬、次世代の同社主力ビジネスはこれまでの「コンピュータ販売」ではなく、「オンデマンド(顧客要請に即応型)」の従量制料金「コンピューティングサービス」であることを発表した。

IBM、従量制料金を開始


 IBMのサミュエル・パルミサーノCEOは2002年10月下旬、次世代の同社主力ビジネスはこれまでの「コンピュータ販売」ではなく、「オンデマンド(顧客要請に即応型)」の従量制料金「コンピューティングサービス」であることを発表した。オンデマンド型は大規模なITアウトソーシングを利用している日米欧のエンタープライズには普及する土壌が築かれているが、SMB(中小企業)での受け入れが疑問視されていた。

 この疑問への答えをIBMが公表し始めた。02年11月下旬、IBMソフトウェアグループ上級副社長、スティーブ・ミルス氏は、「IBMはオンデマンド型へSMBも移行させるため、SMB対象のシステムインテグレータ(SIer)をIBM戦略へ集結させる」と発言し、次のように説明した。「IBMはSMBを対象にSIerと全世界数千社でオンデマンド型のコンピューティングを実現するソフト拡販に邁進させる新プログラムを発足させる。当プログラムの一環としてIBMはソフトウェア拡販、SIer認証の新センターを開設する」

 IBMはわが国を含めて11月中旬、03年にSMB市場の中核ミドルウェアとなるWebSphereなどの低価格Express版の発売計画を公表した。SMB対象のSIer支援にも03年10億ドル(1200億円)を投入することも合わせて説明した。ミルス上級副社長は次のように語る。「IBMのオンデマンド型へビジネスをシフトすることで、SMB対象のSIer市場は一段と拡大する。そのシフト以前にまず、オンデマンドを推進するSMB向けIBMミドルウェアの拡販でSIerは利益を上げ、経営体力を強化することをIBMは望んでいる。SMBにオンデマンドを普及させるには、SMB対象のIBMパートナーの力が決定的な要因になる。IBMは全勢力を世界パートナーがオンデマンド型へ移行することに集中する。パートナーが継続的に繁栄するためには何よりもまず、1社でも多くのカスタマーをオンデマンドへシフトする意識を高めるよう工作をすることが大切だ」

 IBMワールドワイドISV副社長、マーク・ハニー氏も次のように補足する。「IBMが市場開拓でこれまで採ってきたチャネルフレンドリーの方針はオンデマンド時代になっても継続されることを約束する。IBMはチャネルがオンデマンドのために高額投資をする必要がないよう配慮する。SIerやISV(独立系ソフトウェア会社)はIBMが開放するオンデマンドに向けデータセンターを自由に使って、カスタマー・システム開発とホスティング(運用管理)を展開できるようにする」IBMのSMB対象のSIerへの新方針を、IBMの既存チャネルは高く評価する。その1社、マサチューセッツデータのホエル・オング社長は次のように語った。「わが社はIBMの新プログラムに注目している。プログラムが具体化しわが社にもチャンスが広がると確信できれば、わが社も即刻オンデマンドへの体制強化と投資を開始したい」(中野英嗣●文)
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