変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>最終回 何のためのIT化か

2002/12/23 16:18

週刊BCN 2002年12月23日vol.971掲載

 大手ITベンダーの圧倒的な寡占状態にあり、通常では考えられない安値入札が起こる“官公庁需要”。問題是正のために、単純な安値防止といった取り組みだけでは、解決することができない。入札で起こるトラブルはあくまでも氷山の一角であり、その背後にはさまざまな問題が潜んでいると多くの関係者が指摘する。

 「中央省庁でも、自治体でも、何のためにIT化を行うのか、明確な目的意識をもつことが必要」――今年4月から本連載を開始して取材を進める中で、何度も出てきた言葉である。

 一般企業のIT化においても、同様のことが指摘される。「成功したIT化は、なんのためにシステムを導入するのかを最初に明確化している」という意見が多い。

 だが、現実は、「現場の職員がなんのためにIT化を行うのか、理解していない場合がほとんど。隣がやったから、予算がついているからといった理由でIT化が進んでいる」という。

 電子商取引推進協議会(ECOM)が実施した、「電子自治体構築におけるアウトソーシング活用の実態調査」を見ると、ホームページ開設については、都道府県で95%、市町村では86.8%と高い割合でホームページ開設を行っているにも関わらず、「電子メールによる行政情報の発信」、「インターネット経由での情報公開の請求受付・開示」といった具体的なサービスとなると、その割合がどんどん減少していく。

 これでは何のためにホームページを開設したのか、そもそもの目的が都道府県、市町村側に欠如していることの表れであろう。

 特に市町村レベルでは、都道府県以上にIT化によるサービス実施の割合が低い。「何のためにホームページを開設するのか」といった目的をITベンダー側で、積極的に確認する必要があるのではないか。

 さらに、この目的意識をもつために、IT化推進役として強力なリーダーが必要という意見も多く寄せられた。

 中央官庁でも自治体でも、首長がリーダーとなった場合は、IT化がスムーズに進む場合が多い。決定した目標を実現するために首長自身が“CIO役”になると成功例が増えているようだ。

 こうしたITを導入する自治体側の目的意識の向上が、単に安いだけのシステムでは、導入に相応しくないという機運が生まれる。

 さらに、中央官庁や自治体側が、「大手だから」といった理由だけでベンダーの選択をせずに、自分たちの目的にあわせたITの提案を行ってくれる企業を選ぶというサイクルが生まれていくことで、安値での入札といった問題の解消に、本当の意味でつながっていくのではないかと考える。(三浦優子)
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