変わるかシステム入札

<変わるかシステム入札 第二章>IPA(下)

2002/12/16 20:43

週刊BCN 2002年12月16日vol.970掲載

 情報処理振興事業協会(IPA)が発行した書籍「組織の電子化<この失敗を活かせ!>」(コンピュータ・エージ社刊)の中には、ITベンダーとは近い立場にあるIPAでさえも、システム構築を担当した会社との関係がうまくいかなかった苦労話が出てくる。実際にシステム構築に携わったIPAの田居久生・総務部システム管理グループグループリーダーは、「開発を進める段階で、業者に任せきりにするのではなく、話し合いながらシステム構築を進めることが重要」だと話す。

発注者と業者の対話を密に

 ――官公庁や自治体の情報システム構築が抱えるさまざまな問題を解決するために、設計と施工は別の会社が行うべきとの意見がある。IPAの情報システム構築ではどうしたのか。

 田居
 今回は設計と施工を同一会社が行った。それが最良の選択だったと思っている。今回のシステムは、IPA全体にまたがる大規模なもので、設計と施工を別会社が行った場合、施工を行う会社に対し、かなりきちんと説明する時間が必要になってくる。2000年11月からシステム構築開始を行い、02年4月に稼働というスケジュールに間に合わせることは難しかっただろう。設計と施工の分離は、例えば総務システムだけといった比較的規模の小さいものであれば可能だろうが、大規模システムとなると、現実的に実施するのは難しいのではないか。

 また、同一会社であっても、設計を行ったコンサルタントと開発担当者の連携がうまくいかなかったこともあった。

 ――同一会社であっても、連携がうまくいかないのか。

 田居
 設計段階ではシステム化するとなっていたものが、開発段階で「これはシステム化するのは無理なので、手で処理することにして欲しい」と言われてしまう。同一会社であっても、設計段階でコンサルタントが話していたことと、開発を行うSEでは違うことを主張することも出てくる。発注者側は、これを鵜呑みにしないで、「なぜ、システム化できないのか、設計段階では可能となっていたはず」と食い下がることが必要だ。こちらから、「なぜ」という問いかけを行うと、ITベンダー側から新しいアイデアが出てきて、システムがより良いものになっていくという場面が何回もあった。

 ――ITの知識が低い地方自治体の担当者では、開発段階で「できない」と言われると食い下がるのは難しいのでは。

 田居
 そのためにITに関する学習を行うことも必要となり、とにかくコミュニケーションを密にとる努力はしていくべきだ。ITベンダー側でも、一方的に「できない」ではなく、コミュニケーションをとり説明を行うことを心がけて欲しい。

(三浦優子)
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