大航海時代

<大航海時代>第22篇●新しき勇者たちへ 第61話 ほっかぶり

2002/12/09 16:18

週刊BCN 2002年12月09日vol.969掲載

水野博之 広島県総合科学技術研究所 所長

 ベトナムドライバーのもう1つの特徴は、皆「ほっかぶり」をしていることである。
 ほっかぶり? 左様。覆面をしているのだ。野球帽をかぶり三角布で「ほっかぶり」ということになれば、まさに今から「銀行強盗」にでも入ろうか、というスタイルであるが、まあ、こんなのが街中砂煙をあげて走りまわっているのだ。これはベトナム名物、観光資源の1つといってよい。

 何のためにかかる異様ないでたちをするかといえば、1つは大変な日差しと暑さであろう。
 昔は日光浴は体によい、などといわれていたものだが、最近は日光はよくない。皮膚ガンを生じるなど悪者の代表になっている。この点、いかに勇猛果敢なベトナムドライバーたちも恐れをなしての「ホッカムリ」に違いない。
 2つめの理由は砂塵対策であろう。ベトナムの道はどうひいき目に見ても良好とはいいかねる。

 メコン河の見学といい、ベトナム戦争の地下トンネルの見学といい、街の中心より2時間近くもかけて見に行くわけであるが、悪道の連続であって、けっして安泰というわけにはいかない。生来ギックリ腰気味である私の腰はギクギクし通しで、全くもって油断のならないドライブであった。
 窓なんかとても開けられないどころか、車の空気取りから砂塵は入ってくるわ、日光に至っては全く遠慮なくさし込んでくるので、家内も私も早速に野球帽を買い、覆面をした。

 お互いにこれを見るに、いよいよ銀行にでも押し入るか、といういでたちで奇妙に興奮する。こんないでたちで日本の銀行にでも乗り込もうものなら、たちどころに警備員が飛んでくること間違いない。なんだかベトコンにでも変身したような具合であった。
 かくして我がベトナムの旅は、バイクに始まり、バイクのいで立ちに終わった。なにやら田舎に行ったのやら、文明に合ったのやら? (空港にて)
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