e-Japan最前線
<e-Japan最前線>22.あすのまち・三鷹プロジェクト
2002/12/02 16:18
週刊BCN 2002年12月02日vol.968掲載
報告会は大盛況に
三鷹市が今年7月にスタートした電子自治体関連プロジェクト「あすのまち・三鷹プロジェクト」の第1回報告会が先月18日、一般市民を含む約140人が出席して開催された。医療、教育、公金の電子収納の3つの事業が計画されているなかで、経済産業省の補助事業である医療と教育の1部プロジェクトが10月からスタートしたことを報告。ITを活用した新しい行政サービスの実験がいよいよ本格的に動き出した。第1回の報告会は「当初の予定では60人程度を想定していたのですが…」との事務局の予想を大きく上回り、大盛況だった。とくにプロジェクトに参加している会員企業の関心が高く、医療、教育という2大コンテンツを取り上げる同市のプロジェクトへの期待の大きさをうかがわせた。
10月からスタートした経済産業省のプロジェクトの狙いも「新しいサービスとしての仕組みが回っていくかどうかを検証する」(経済産業省商務情報政策局情報通信機器課)のがメーン。技術的なことを検証するというより、採算性を含めてビジネスとして成り立つかどうかも検証ポイントのひとつだ。
医療分野では、4つのサービス実験が始まった。通院が必要な患者がインターネット経由で担当医師からのアドバイスを受けられる「健康管理サービス」、独居高齢者の見守りを行う「独居高齢者向けサービス」、健康診断データなどを基にアドバイスを受ける「健康アドバイスサービス」、健康に関するさまざまな情報を提供する「健康情報サービス」。このうち、後者2つのサービスはモニター参加を一般公募し、アドバイスサービスには45人、情報サービスには120人の参加があった。
健康管理サービスは、専用の「健康管理端末」を設置してもらい、体温、血圧、体重、血糖値などを測定してデータを送信。担当医がデータを見ながら、ビデオカメラ、音声による相談を行う。技術的にはすでに実用化できるレベルにあるが、実用化できるかどうかのカギは、サービスが患者にとって有効なのかどうか。医療行為としての有効性が検証できなければ「厚生労働省などに、こうしたサービスを医療保険制度の対象にすべき、と提言することもできない」(経産省)からだ。
健康アドバイスサービスは、ウェブ上で利用者が自分自身の健康情報を手帳につけて管理するというイメージの「健康管理手帳」が表示され、必要であればその手帳のデータを基にアドバイスが受けられる。健康な人が自分の健康情報を手帳などで管理している習慣が定着しているわけではないと言えるだけに、こうしたサービスが頻繁に利用され、ビジネスとして成り立つかがポイントとなる。
教育関係では、子どもがパソコンを使ってドリルなどの教材を利用できるサービス「まなぼックス」がスタートした。小学校6校を指定し、3、4年生から希望する児童約100人に専用ソフトを組み込んだパソコンを貸与したが、「計画していた数のモニターを集めるのに苦労した」(事務局)という。
健康情報にしても、学習情報にしても、他人に最も知られたくないプライバシー情報だ。パソコンで教材学習を行った場合、子どもの学習能力はデータとして蓄積されることになり、理解度などを数値で示すことがより簡単に行えるようになる。これをどう受け止めるかは、人それぞれによって判断が分かれるところだろう。
いかに利用者に不安を与えずに個人情報を扱う仕組みを作るか。インターネットを使った医療、教育などのサービスを実現するための最大の難関かもしれない。
同市では、来年1月には公金の電子納付に関する実験をスタート。プロジェクトに関する情報公開も、引き続き積極的に進めて行くという。(ジャーナリスト 千葉利宏)
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